誘惑
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| 北原亜以子さんは、直木賞を受賞してから、どんどん腕を上げた たいへんな努力の人でした。 残念なことに、あんまり頑張りすぎて七十代で亡くなってしまつたが、この「誘惑」に登場する、西鶴と近松のお話も、よく調べて書いてあり、面白くてタメになる歴史小説に仕立てあがっている。 | ||||
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| 「おさん茂兵衛」と言えば、西鶴も近松も取り上げた姦通事件として、知っています。 でも、その名前だけの知識で、それ以上のない様についっては全く知りませんでした。 今回この作品を読んで、当時の男社会の中にあって、恋することもできなかった女性の立場が良く理解出来ました。 そして、家庭を顧みず仕事にだけ熱中する男たちの身勝手な男たちの態度は、現代にも通じます。 この物語では、「おさん」に対する形で「あやめ」を置いています。 夫の士官させるため、商人に身を任せ妊娠してしまいます。 この男の地位が上の場合は許され、女の立ち位置が上の場合は許されないと言う不合理な法律の中で、おさんは恋を貫き通します。 この設定の中で特に感心したのは、自分の地位の保持に汲々としている権之助が、おさんを訴えるとは思えず、そこにおみつと言う恋敵を登場させて、駆け落ちしたおさんを追い訴えさせる展開は、上手いと思いました。 又、二人を手引きする女中のおたまの表現も、当時の状況からすればそうせざるを得なかったと思われますが、自らも茂兵衛への思いを抱いていると言う設定にして、更に手助けの動機を強固にしているのもいいなあと思いました。 | ||||
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| 江戸時代の実在の姦通事件を題材にした小説で、井原西鶴の『好色5人女』、近松門左衛門の『大経師昔暦』、映画『近松物語』等、これまでにも数々の小説やお芝居の題材となっているようです。本書は、おさんと茂兵衛の不義密通事件も題材にはしているのですが、この話だけを扱っている訳ではありません。1680年頃を時代設定に、あやめという牢人の妻の不義とどん底に落ちた彼女を助ける人々の人情、茂兵衛に恋焦がれる人形問屋の娘おみつの狂気なまでの女の怨念、おさんの夫で大経師である権之助の商売と政治の駆け引き、武士の没落と商人の台頭、京から江戸への時代の移り変わり等、多彩な糸で織りなされた小説となっています。馴染みの薄かった大経師や暦の変遷等の話も、なかなか興味深かったです。面白い一冊でした。 | ||||
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