精神の氷点
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初版刊行(参考)
種別
長編
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あらすじ
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評判
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0.00/10点 レビュー 0件。 - ランク
精神の氷点の総合評価:
10.00/10点 レビュー 2件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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時代の風潮というか、社会の間質の中に流れる風潮、イデオロギー、暗黙的な心性のようなものの中の一人物としての、主人公。彼が、悪辣な国家への反発、憎悪から転落し、転落した自己を悪辣なものとしなければ、自己を持することができず、若い娘を手ごめにし、人妻を淪落させ、昔の家庭教師のときの生徒の預金通帳を盗み、知行一致の自分を体現せずばいられなかった、堕落した彼の不倫も、巷で人目に触れられず、むしゃくしゃした気持ちの解消や寂しさや人恋しさやから行われる(だろう)不倫も、時代の、社会の、風潮やイデオロギーや暗黙の心性から免れ得ず行われた、似たりよったりの行為として見えるほど、そのなかで単に流されているだけに見えるほど、時代や、社会やが、巨大であるのは、今も全く変わらない。戦争期の特殊性は、現在の特殊性に比べて、特別その渦中に生きている者にとって、難しい時代、社会ではない(はずである)。
「かくて、水村の『出発準備』(注、出征への)は、完了したのであった」(P124)水村とは、主人公の名である。毎日、毎日、朝、この「出発準備」――人を殺して、自分を殺すという食い込まれた、自己を空にする体験――をしなければ、出勤のできない人があるのを信ずる。この譬えは、成り立つと思う。
戦地への出征と、会社への出勤を、比べるのは 馬鹿げているだろうか。抜け穴のない現実に向かうことという意味では、全く同じであり、これを嗤う者は、戦争期の特殊性は、現在の特殊性に比べて、生き難い時代、社会だと考えるだろう。もしかしたら、(ヒューマニスティックにすぎる)この小説の作者自体が、そうかも知れない。つまり、この私的な感想は、この小説の一部を切り取ったものにすぎず、全体的な感想を全く表していないものにすぎない。