(短編集)
巡査失踪
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その生涯で、1000編以上という膨大な数の短編ミステリーを執筆した佐野洋。本書は、北海道警察の垂内署を舞台とした連作短編集である。といっても、最後の最後で各作品が有機的に繋がる、という加納朋子型のものではなく、あくまで同一の設定に基づく作品集ということである。また、本書は佐野洋が初めて手掛けた警察小説らしい。 内容に関しては、取り立てて言うことはない。佐野洋の作品は、良くも悪くも非常に読みやすい。手堅くまとまった短編ミステリーという域を出ることは、ほぼない。読んでいる間は楽しいのだが、読み終わった端から内容を忘れていってしまうことが多い。だから、暇潰しに読む分には最適だが、本腰を入れて読書をしたいだとか、何か得るものを求めて本を読むだとか、そういった方には一切オススメしない。 しかし、読みやすく癖がないように見える佐野洋作品にも、強烈な癖がある。それは、佐野洋が言葉遣いにヒジョーに厳密な人だった、いや、もっとはっきり言うと偏執的とも言えるほどだったということである。それは、佐野洋の代表作にも数えられる『推理日記』シリーズにも随所に見られる。作家が文章を省略したり、人称の区別が曖昧だったりすると「これは叙述トリックの一種なのだろうか」などと言い出す。これがいやみや皮肉や当てこすりならまだいいが(何も良かないが)、これを本気で気にしているのが佐野洋という人である。以下に、本書収録の短編「娶妻願」78ページから、一部の文章を抜粋させていただく。 <松原一課長によると、偽刑事の名は、松本銀三だという。松原が、黒板に書いたその字を見て、彼は、顔が赤くなるのではないかと自分で心配になった。 根本は、名は鉛二であった。何でも、鉛は放射能を通さないという話を聞いた父親が、生まれたばかりの次男の名に、鉛という字を使ったのだという。彼は、昭和二十二年、つまり日本に原爆が落ちて二年後に誕生した。鉛が放射能に強いと聞いた父親は、早速、それにあやかるつもりになったのだろう。 松本銀三と根本鉛二。この二つが似ていることに、根本は黒板の字を見た瞬間、すぐに気がついた。両方の姓名とも、第二字目が『本』であり、末字が漢数字であった。そればかりではなく、残りの第一字、第三字も、偏が同じであった。そのせいであろう。『松本銀三』の四文字が、自分を指しているかのような錯覚を覚え、赤くなりかかったのだった。> …いかがです? クドいでしょー?(笑) 第二段落で、わざわざ<生まれたばかりの次男>と断っていますでしょ? ここは省略しても良いところですよ。別に根本さんが長男でも四男でも話に影響はない。ただ、佐野洋が「ちゃんと断っておかないと気持ちが悪い」という理由で書いたものであるのが見え見え。第三段落の、松本銀三と根本鉛二という名前がどのように類似しているか、という件は何をかいわんや。ここまでクドクド説明しなくても、まともな読解力を持った読者はちゃんと理解できますよ、佐野センセー? これだと、読者のことを信用していないようにも思われかねませんですよ。 佐野洋作品を読んでいて、いつも行き詰まるのは、こういう文章にぶち当たったときである。ここで「ああ、またか…」と脱力してしまい、しばらく積ん読状態になってしまう。スナック感覚で読むべき作品が、まるでシカゴピザのようなどっしりしたものになってしまう。うーむ、やっぱり佐野洋は私には合わないのかもしれない。 | ||||
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