永遠の0
評判
永遠の0の評価:
3.96/5点 レビュー 2,077件。 S ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全319件 141〜160 8/16ページ
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
健太郎は四歳年上の独身の姉の慶子と、軍隊関係者を訪ねていく。そこで二人は祖父の話を聴かされるという形を本書はとっているのだが、実は話の徴集という形をとりながら次から次へと時系列的に「太平洋戦史」について述べられていくのが本書の特徴である。
まず一人目、「元海軍少尉 長谷川梅男(第二章)」の話。
「元海軍中尉 伊藤寛次 八十五歳(第三章)」の話。「元海軍飛行兵曹長 井崎源次郎(第四章・第五章)」の話。伊藤、井崎の二人の話は、太平洋戦史について、観衆の前で机上に原稿をおいて講義をしているよう。『突撃した約八百人中七百七十七人が一夜にして死んだと言われています。』(200頁)、『沈没した艦艇二十四隻、失った航空機八百三十九機、戦死した搭乗員に千三百六十人。』(244頁)。元一兵である者が戦史全体を知りえていることは不自然であり、結局、作者が本書576頁に「主要参考文献」の二十八の書籍を揚げているが、戦史を勉強した作者が作者の言葉で語っている風なのである。自宅に尋ねてきた二人(健太郎・慶子)に昔話を聴かせるような口調ではないのだ。
「元海軍整備兵曹長 永井清孝(第六章)」の話。ここでは戦史の記述よりも「ヌード写真」という逸話が述べられる。作者の作り話か上記参考文献からかはわからないが、他の章で記述された逸話が参考文献からのものということだとすれば同様かもしれない。
「元海軍中尉 谷川正夫(第七章)住居:老人ホーム」の話。ここでも戦史が述べられる。
「元海軍少尉 岡部昌男(第八章)」の話。ここでも戦史が述べられるが、宮部が特攻で死んだことを聴かされる。
「元海軍中尉 武田貴則(第九章)」の話。武田の台詞に「無防備の貿易センタービルに突っ込んだ奴ら(アルカイダ)とは(特攻は)断じて同じではない!」(423頁)とあるのは、どうやら作者は9.11の事件を契機に本書を書きあげたのではないかと思わせる箇所である。
「元海軍上等飛行兵曹 景浦介山(第十章)」の話。
「元海軍一等兵曹 大西康彦(第十一章)の話。「そんな状況の中で、ついに宮部少尉にも(特攻の)出撃命令が出たのです。」(524頁) 第十一章から以降は小説らしい展開がなされる。
「祖父大石賢一郎(第十二章)」の話。
最終章のエピローグは、宮部の最期を見たであろう当時の米軍人をとおしての話で終わる。
この小説の舞台は、124頁に「来年は戦後六十年の節目の年にあたり、-。」とあるから、2004年ということになる。たとえば「元海軍中尉 伊藤寛次 八十五歳」というように、話を述懐する者は皆、既に高齢である。ところで、以前零戦が展示された施設で本物の零戦を観た経験がある。そしてそこへ、過去従軍されていた老人が訪れていた。数人の家族とともに旅行の途中にその場所に寄ったようなのだった。『おじいちゃん、昔、軍隊の時…どうだったの』と孫らしき女性が祖父に尋ねた。しかし、その老人の頭は既に痴呆の状態でほとんど覚えていない状態であった。実際には、本書のように高齢者がよどみなく述懐することは困難であろう。たとえば設定が戦後五十年で1994年。年齢が七十五歳ということであれば、まだ現実的なのだろうが。聴き取りという体裁をとっているが、これが実に不自然なのである。しかし、本書末尾解説579頁「なまじ歴史本などより、-戦争の経緯とその実態を教えてくれる点でも実に秀逸な物語と思うのは僕だけであろうか。」とあるように、上述したような「主要参考文献」二十八の書籍を全て読み込むには、読者にとって労がいる。本書一冊で簡単に太平洋戦史を知る手段として便利な書という点では優れているのではないか。