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死人花



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【この小説が収録されている参考書籍】
死人花―「彼岸花」異聞 (角川ホラー文庫)

死人花の評価: 4.60/5点 レビュー 5件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.60pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全5件 1~5 1/1ページ
No.5:
(5pt)

あまたを数えることよりもひとつを選ぶ愛しさは、きっと鬼には嗤わせない。

「彼岸花」シリーズ二作目であり、異聞と冠することからわかる通りに一種の「IF」、パラレル・ストーリーです。
「弟切草」シリーズの要素も少々流入していますが、そちらはおまけといったところになります。
『弟切草』と絡んでの本番はシリーズ最終作である『幽霊花(上・下)』にて。そちらは後述させていただきます。

さて、新幹線車内、京都古刹めぐり、そして本番の「鬼谷寺」からなる舞台立ては変わりません。
物語を構成する章立てにはじまり、タイムラインや大まかなイベントも『彼岸花』からおおむね共通です。
前作から流用された文章も多いのですが上手く再構成しているので、受ける印象はかなり異なってくることでしょう。

なぜならば、今回は長坂先生があとがきでおっしゃられている通りに原著にみられたホラーとしての側面をほぼ捨て去っており、ミステリー一本で勝負しているためです。
当然ながら犯人も異なります。種明かしの装いを変えた比較も込みで、私自身新鮮な気持ちで楽しめました。

それに最初の一ページからして、今回はこう来たか!? といった感じで一気に話の前提を塗り替えます。
『彼岸花』とは絶対同じ結末にはならないだろうと、冒頭からして万人に納得させる作りに仕上げたわけです。

ただ、ミステリーとしてはやはりと言いますか、かなりの破格でした。超展開と言っても差支えありません。
なかなかに奇想天外なオチはミステリ的に「おいおい……」となりそうなものですが、本命の謎解きが終わった後なのでまぁありでしょうか。私は完全に開き直っているので参考になるかはわかりませんが、個人的にはめっちゃ好きです。
メイントリックそのものは置いておいて、その背景に隠されたものは冷静に考えればツッコミどころ満載なのですが、一周回って勢いで読ませてくるパワーがありました。

とまれ、読者を煙に巻くべくそのほかにも多種多様な攪乱要素が前作同様全編に振りまかれているわけです。
それらすべてを取り払えば「犯人はなぜここまで仰々しいことをしたのか?」という疑問が浮上してくるはずです。
この際、読者諸姉諸兄は問題を切り分けてノイズを除去し、いったい何を推理すべきかを一点絞ってみましょう。
そのポイントさえ当たっていれば、たとえ推理が外れていても胸を張れると思います。

それでもお怒りになられる方は一定数いらっしゃるのでしょうが、作中で手掛かりは提示されているのできっとフェアプレイの範疇に入ると信じています。
前作を読んだ方なら刷り込まれるであろう先入観を活かしての、伏線とミスリードの張り方が実にお上手でした。

よって単独で読めないこともないのですが、前作を先に読んでおくことはほぼ必須といえます。
作品のコンセプトとしては『彼岸花』の補遺であり、解答編も兼ねているようにお見受けしますから。
すなわち、前作の舞台裏でどのような仕掛けが繰り広げられていたかがわかります。具体的には三人娘を脅かす各種トリックのことを、完全イコールではないにせよ知ることができて地味に嬉しいかもしれません。

それから起こる事件は(表面上は)同じでも、三人娘な主人公トリオをはじめメインの登場人物は続投しているので、キャラクターのファンの方なら必読といえます。
先述の通り、本作は前作のバージョン違いなわけですが、ともすればメインキャスト続投の続編を読んでいるように錯覚させられる方もいるでしょうね。色々とお膳立てを変えてみても、キャラクターの芯がブレないことにグッときました。

なお、今回の主たる視点人物は「有沙」と「菜つみ」、それともうひとりをチョイスしています。
「融」視点はないことはないのですが、読者向けにこれら視点人物三名が企図するものが早期のうちに提示され、思惑が交差していく都合もあってか。最後まで彼女の視点は伏せられていました。融ファンはちと残念かもしれません。

友情と愛情、そして復讐や使命感など、誰が何と何を天秤にかけるのかをここで列挙することはしませんが、それぞれの心境と葛藤がしっかり表現されていて人間ドラマを盛り上げてくれました。
前作で棘が目立った有沙も、友情と冷徹な計算、それに愛情を天秤にかけての揺れ動くさまが光ったのでグッドです。
菜つみについては言わずもがな。悪い男に振り回されつつも、きちんと我を示す彼女たちは実に魅力的でした。

時に、今回はそれぞれの思惑がかなり透けています。
ゆえに読者目線で彼女たちの知恵比べ、伏せ札をどうめくり反応を引き出すかの駆け引きが刻一刻手に取るようにわかる。言ってしまえば、ハラハラドキドキのスペクタクルを楽しめるわけなんですよ。

以上。
喩えるのなら『彼岸花』は一周目、プレイヤー全員が辿ることになる共通ルートでこちら『死人花』はそちらのクリア後に解禁される派生ルートといったところでしょうか。
似て非なる二編の小説を並べることにより、ゲームのルート分岐を疑似的に再現したような趣があります。
紙の本で通しで読むことは元より、電子書籍を使えば細かな差異を確かめる楽しみが容易に行えるかもしれません。

小説でそういうことをやるのはすごくぜいたくな試みな気もするのですが、ゲーム版が大不評を食ったという風聞を聞きつけた私としてはそちらをプレイする余力がありません。こちらで代わりとばかりに楽しませていだたいております。
ともすれば長坂先生がゲームでやりたかったのは、こういうことなのではないかと推測することができました。

一見、同じ前提で進むのかと思いきや根底から違っていた。
そして一度確定した結末をひっくり返し、真実と引き換えに失うモノの重みを嚙みしめることができる。 
――能動的に分岐を選ぶゲームでなく本質的には読み進めるしか選択肢のない小説なこともあって、もし仮にこの小説をゲームに落とし込んでも感触が異なることは否定できません。とはいえ、面白いコンセプトに出会えて満足しています。

考えてみれば『彼岸花』という小説の時点からして、シナリオ中に大量のフックというか、イベントのフラグがばらまかれているのですね。今回はここを拾い、あるいはここを膨らませるといった風に。
そういった作者の試行錯誤ですら、『彼岸花』と『死人花』の二編の小説の読み比べで追体験できるかのようでした。

また、本作では独特の文体も控えめで、女同士の友情で終結したこともあってかなり読みやすかった面もあります。
あと「弟切草」シリーズの方では大暴れした「ばらもん」も、今回は名前だけの言及でついに影すら出なくなりました。
そちらを鑑みると、ばらもんもシナリオ中に用意された数あるフックのひとつに過ぎないと示すようで興味深いです。
選び方次第で変化するゲーム体験を、小説に落とし込めたのではないでしょうか、と。

さて、いい加減長くなってきましたのでレビューをそろそろ畳むことにいたしますか。
「彼岸花」シリーズのうち最後に残る『幽霊花(上・下)』ですが角川ホラー文庫版『弟切草』の続編にも位置づけられるタイトルだそうで、ある種のお祭り的クロスオーバー作品として世に送り出されました。

そちらはそちらで『弟切草』に由来する「メタ・フィクション」としてのコンセプトを活かした快作なので、シリーズのファンなら大いに楽しめることでしょう。「読者への挑戦状」と並行して長坂先生のゲームを取り巻く事情が虚実こもごもでしっかり記されて、また異なった意味でゲーム的な面白さが描かれたことも見どころだったりしますし。
それと同時に、間違いなくこれで終わった実感と達成感が得られるはずなのでこの記事でもおススメしておきます。

ただし、『弟切草』にさほど思い入れがなく『彼岸花』という作品そのものの純度をより高めたい読者なら、奇妙な読後感は別にしてこちら『死人花』でいったん切っておくのも選択のひとつに入るでしょうね。
『彼岸花』が出題編なら『死人花』は解答編、ないしは基本形に続いての発展形と定義することもできますから。

優に百を越える異名を持つ花、彼岸花。
百八十七の結末を数えると豪語したゲーム『彼岸花』。
けれど本当に大事なのは数ではなくて。目で読んで、声に出して愛せるかどうか。

だから、たったひとつの名前でも、ただひとつの結末でも心に残せた方がその人にとっての正解なのかもしれません。
それは、たったひとつないし、ふたつの結末を愛した私だから言えることだと信じたい。
もっとも、読んでいる道中、私自身はぜんぜん真相が読めなかったのですけれどね。見えてるようで見えてない。知ってるようで勘違い。奇しくも、来年のことを言ってしまったことで誰かさんに笑われたかのようでした。
死人花―「彼岸花」異聞 (角川ホラー文庫)Amazon書評・レビュー:死人花―「彼岸花」異聞 (角川ホラー文庫)より
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No.4:
(5pt)

彼岸花 異聞

 この作品を読む前にできれば彼岸花を読んで欲しい。ストーリーは彼岸花をもじったものだが結末は全く違うものになります。彼岸花を先に読んだ人にはトリックがそうゆうことだったのかというのが分かる場面がでてきます。 ホラーミステリーということで最後がハッピーエンドになるかバッドエンドになるか 謎?! とします。とにかく読んでください。
死人花―「彼岸花」異聞 (角川ホラー文庫)Amazon書評・レビュー:死人花―「彼岸花」異聞 (角川ホラー文庫)より
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No.3:
(5pt)

彼岸花 異聞

この作品を読む前にできれば彼岸花を読んで欲しい。ストーリーは彼岸花をもじったものだが結末は全く違うものになります。彼岸花を先に読んだ人にはトリックがそうゆうことだったのかというのが分かる場面がでてきます。
 ホラーミステリーということで最後がハッピーエンドになるかバッドエンドになるか 謎?! とします。とにかく読んでください。
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No.2:
(4pt)

もうひとつの結末

長坂さんの著書には、ゲームでも有名な「弟切草」、「寄生木」、「彼岸花」の三部作がある。この作品は、「彼岸花」と同じ設定で、まったく別の結末を迎える。ストーリーとして楽しめた「彼岸花」に対し、とことん恐怖を追求している。この作品を楽しむに当たり、是非上に掲げた3作品も読んでもらいたい。
死人花―「彼岸花」異聞 (角川ホラー文庫)Amazon書評・レビュー:死人花―「彼岸花」異聞 (角川ホラー文庫)より
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No.1:
(4pt)

もうひとつの結末

長坂さんの著書には、ゲームでも有名な「弟切草」、「寄生木」、「彼岸花」の三部作がある。この作品は、「彼岸花」と同じ設定で、まったく別の結末を迎える。ストーリーとして楽しめた「彼岸花」に対し、とことん恐怖を追求している。この作品を楽しむに当たり、是非上に掲げた3作品も読んでもらいたい。
死人花―「彼岸花」異聞 (角川ホラー文庫)Amazon書評・レビュー:死人花―「彼岸花」異聞 (角川ホラー文庫)より
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