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(短編集)

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魔性の眼



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【この小説が収録されている参考書籍】
魔性の眼 (1957年) (世界探偵小説全集)

魔性の眼の評価: 4.00/5点 レビュー 1件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(4pt)

濃密な描写力と文体!

原著1956年刊、邦訳刊行1957年、原題 Le Mauvais Ceil。
 中編2編を収めたもので、表題作のほか「眠れる森にて」を併載。
 「魔性の眼」は、12年間の記憶を失ってベッド暮らしをしていた18歳の少年レミが、”治療師”のおかげである日突然立ち上がれるようになった不思議な出来事から始まります。歩くレミを見て、かかりつけ医も父親も看護婦も一様に驚きますが、喜んでくれる人はなぜかいない。みんな彼が何かの記憶を取り戻すことを恐れているようなのです。歩けるレミは、12年前に死去した母親の墓所を訪ね歩きますが、みつからない。そうこうするうちに、叔父が上階から転落死したような状態で見つかり、昼間のドライブ中に叔父にからまれ一瞬殺意を抱いた覚えのあるレミは、自分の眼が呪力を持っているのではないかと疑心暗鬼になっていきます。
 多くの人の庇護のもとに12年を過ごした少年が自立に目覚め旅立つまでの短い期間の揺れる繊細な心が感じ取った真実を描いた心理サスペンス。
 「眠れる森にて」は、1818年にとある貴族が綴った遺書から始まります。フランス革命で命からがらイギリスへ逃れたオーレリアン伯爵は、母の遺言に沿い、先祖の城を買い戻しにフランスを訪れます。しかし他家が城を所有していた2代の間、ひとりは自殺、ひとりは発狂という非業の運命を辿り、忌まわしい噂が残りました。そんな先祖の城を見に訪れた若い伯爵は、夕暮れにシルエットで見た若い娘に一目ぼれし、うまく機会をとらえて城に招待してもらいます。その日が待ちきれず深夜城に忍び入った彼は、卓についたまま死んだように凍り付いた娘とその両親を発見し、混乱して逃げだしますが、後日ぴんぴんしている娘家族と再会するのです。異様な現象にも関わらず、伯爵は娘への思いを募らせ、ほどなく彼女と結婚して城での生活を始めます。しかしその日々は幸福とは程遠く、娘は不可解な秘密を抱えながら日増しに消耗して亡くなってしまい、伯爵は呪われた家系に終止符を打つとして拳銃自殺を遂げるのです。最終章で、城の相続権をもつ若者とガールフレンドが、廃墟を歩きながら伯爵の遺書を読みながらこの怪異譚を推理します。理系のガールフレンドは、いっさいの抒情的要素を無視して事実のみを取り出し、見事に合理的な説明をつけて幕を閉じます。めでたしめでたし!

 2篇とも、このチーム独特の濃密な描写力、文体がなければ成り立ちえない物語。純文学をまるで読まないので、フランス文学全般にそうなのかどうかわかりませんが、ミステリの世界にあっては比肩するものがない特徴と思います。
魔性の眼 (1957年) (世界探偵小説全集)Amazon書評・レビュー:魔性の眼 (1957年) (世界探偵小説全集)より
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