魚影の群れ
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非常に良い。 | ||||
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魚影の群れの主人公の漁師に感情移入してしまう。 50歳前後の主人公は心の柔軟性を失い、本当の気持ちとは裏腹に意固地になり、その振る舞いが望むものとは全く違う結果をもたらしてしまう。自分自身に当てはめてみると、カタルシスの為に一言余計なことを言ってその時は清々するが後に後悔するようなことが50歳を超えて多くなってきた気がする。余計なことを言わない方がいいとわかっているのにだんだんとコントロールが効かなくなってきている感じで、まさに心の老化だ。そんな中年の男性の気持ちを上手に物語に落とし込んで自然に表現してくれている。 海の鼠は、吉村昭の記録文学の本領発揮という感じだ。あまりのリアリティーに気持ち悪くなってしまう。一組のドブネズミの雄雌が1年後に一万匹に増えるという。鼠が沸くという表現が大げさでないことが数字でも分かる。Google Mapで見ると、まだこの島には人が住んでいるようだ。 | ||||
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表題作の他、「海の鼠」、「蝸牛」及び「鵜」の4編から構成される<人間と自然・生き物との対峙>をテーマとした短編集。表題作は映画化もされたので有名だろう。私は綿密な事前取材に基づいたドキュメンタリー・タッチの作者の作品(所謂"記録文学")を愛好しているのだが、本作の作風・テーマはそれとはやや異なる(ちなみに、表題作と「海の鼠」は自選傑作集に選ばれている)。以下では主にその両編について。 中編と言って良い長さの「海の鼠」は、昭和24年のカロリン台風に襲われて多くの漁師を亡くした四国沖の島の漁村の人々の苦衷を"記録"を随所に織り込んで描いた作品。主に台風襲来後を描いており、島人の苦衷の原因は耕作地の少ない島にとって貴重な農作物(後には煮干しも)を食い荒す"海からやって来た鼠"の大群である。まさに「人間vs海鼠」という<対峙>の構図である。鼠の生態に関する作者の描写は精緻を極め、数字的記録と併せて、"記録文学"の趣きを呈している一方、鼠の大群に必死で抵抗する島人の姿はある種の人間ドラマとなっているという構成の妙・作者の筆力が光る秀作。私は鼠、蛆、蛇、鼬などに対する作者の執拗な描写に生理的嫌悪感さえ覚えたが、最終的に、自然現象に人智は及ばないという示唆が如何にも作者らしいと思った。表題作は、津軽海峡を舞台として、同世代の漁師が引退する中、妻に逃げられながらもマグロ漁師を続ける初老の頑固な房次朗を主人公として、その娘の登喜子、彼女の婚約者でマグロ漁師を目指して房次朗への弟子入り志願だが、房次朗からは(妻に加えて登喜子を失う事を恐れて)嫌われている町の男の俊一の3人の人間模様を描いた作品。マグロと<対峙>する漁師の矜持・孤絶及び房次朗と俊一との確執を同時に描いた力作。マグロ漁に関して作者が充分な事前取材を行なった事が窺える。 この他、「蝸牛」は「海の鼠」と似た作風だが、エロティック風味を加味して幻想色を濃く出した佳作。「鵜」は題名通り、<鵜匠>を主人公とした作品だが、<鵜>と共に妻も思い通りにならない様を<鵜飼>という伝統美の中で綴った佳作。<人間と自然・生き物との対峙>をテーマとして、作者の特長の"記録文学"に創作性を加味した傑作短編集だと思った。 | ||||
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動物を介して人間と自然との対峙を描いた四篇、海の鼠、蝸牛、鵜、魚影の群れ。いずれも結末、私の浅慮では当たらない。 (海の鼠)いまのコロナの問題に類似している。天敵をワクチン、殺鼠薬物を治療薬と置いても当たるような気がする。何をもってしても人類が意図的に生物種を絶やすことは極めて困難である。絶やすことを意図せず、利用しようという魂胆が見える時、天は動物を引き揚げる。 (魚影の群れ)「かれは漁師として当然のことをしたにすぎず、それがりかいされぬのならやむを得ないと、自分に言いきかせていた。」とは端的に主題を示している。 | ||||
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吉村昭は、長編小説を書いた後は二、三ヶ月放心状態で、その後短編を書き始めるらしい。 短編とはいえ、氏らしく緻密な取材、研究が感じられ、人生で、よくこれだけ多くの作品が残せたことに 驚嘆する。 本書の4つの短編、どれも読み応えがあった。「海の鼠」も「蝸牛」ももっと派手なストーリー展開も 出来そうだが、吉村はしない。「鵜」は大切に育てたものが離れていく寂しさを感じ、 鵜も人間もちょっとしたことがきっかけで関係性は変わる。 「魚影の群れ」は、老境を迎える無骨な仕事師の不器用さが描かれている。ラストは衝撃だったが、 素人の俊一は、熟練の房次郎も釣ったことのない300キロの大物を釣っていた。 仕事に命をかける男には、悲しみが付きまとう。 | ||||
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