蓼喰ふ虫
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本書『蓼(たで)食(く)ふ虫』の書名は、 蓼食う虫も好き好き、ということわざの一部です。 省略された「好き好き」という部分が小説のテーマでしょう。 男女の不思議で厄介な「好み」(9頁)を、蓼食ふ虫のことわざに例えています。 本書『蓼食ふ虫』には、虫は登場しません。ペットの犬が二匹登場します。 1928年から1929年にかけて新聞に掲載された谷崎潤一郎の小説です。 約百年も前の新聞小説です。 すっかり変わってしまった現代の男女関係に参考になるのでしょうか? 本書文庫版には小出楢重の挿絵八十余点が、完全収載されています。 挿絵だけ拾い読みしても面白いです。 挿絵に導かれながら読めば、もっと楽しいです。 谷崎もこの挿絵を楽しみにして、 挿絵に励まされながら、この新聞小説を執筆したそうです。(318頁) 本書のカバー画と同じ挿絵が、101頁にもありました。 本書カバー画は、大きな犬の首に抱き着いた男の子の絵です。 犬の名前は、リンデイー。子供の名は、弘。 犬は、小父さんの御土産の「グレイハウンド」。牡犬。「一年と七箇月」(64頁) 「リンデイー。―――リンドバークのことだよ、ハイカラな名だらう?」(59頁) 「リンデイー、お前は鱧だとよ」(97頁) 顔が長いから、魚の鱧(はも)みたいな犬やなあつて。 散歩のとき出会った酔っぱらいのような見知らぬ人が言った。 弘は話の風向きを変えて皆を笑わせました。敏感で利口な子どもです。 本書の主人公は、愛のない夫婦の間に生まれた息子「斯波 弘(しば ひろし)」(57頁) 「小学校の四年へ行ってゐる弘」(20頁)。「十歳以上」(21頁) 「互いに愛人がいながら離婚にふみきれない中年夫婦」(裏カバー表紙)とは、 夫の要(かなめ)と、その妻の美佐子。 互いの愛人とは言っても、その愛は未知の疑問に包まれ、不確かなもの。 美佐子は「三十に近い歳」(18頁)。二十代後半。要と結婚して十数年でしょう。 「愛することは出来ないまでも慰(なぐさ)み物にはしなかつたつもりだ」(134頁)と 理屈っぽく夫の要が言うと、 「だけどあたしは、慰み物にされてゞももつと愛されたかつたんです」(134頁)と 受け答えをする妻の美佐子。 美佐子の不倫相手は、阿曽(14頁)という男。 美佐子は離婚後、息子の弘を引き取って育てるつもりはないようです。 この点について、阿曽と美佐子はまだ話し合いも合意もできていない様子。 ピオニーという名の、前から飼っているコリー種の牝(めす)犬(83頁)も、 御土産の牡犬リンデイーと共に連れて、阿曽の家へ行くつもりもないようです。 美佐子の父親は、京都に住んでいます。 その父親の妾は、お久(ひさ)(16頁)。二十二三(161頁)の京女(165頁)。 娘の美佐子より若い。(28頁) 「まことにお久こそは封建の世から抜け出して来た幻影であつた」(170頁) 要は幻影に囚われている人間です。 そして、要の従弟(いとこ)の小父さん、高夏秀夫(57頁)が 仕事に合わせて、上海から要夫婦の家に来てくれた。(62頁) 高夏だって、元妻の芳子さん(79頁)との離婚歴があります。(71頁) そして最後、「要はひそかに老人よりもお久の意見が聞きたい気がした」(250頁) 要はいつまでも幻影を追い求め続けるのでしょう。 | ||||
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