異人の守り手



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    初公開日(参考)2023年03月
    分類

    長編小説

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    異人の守り手

    2023年03月07日 異人の守り手

    闇から闇へ“人を助ける”仕掛け人! 慶応元年の横浜。世界中を旅する実業家のハインリヒは、外交官しか立ち入ることができない江戸へ行くことを望んでいた。 だがこの頃、いまだ外国人が日本人に襲われる事件はなくならず、ハインリヒ自身もまた、怪しい日本人に尾行されていた。 不安を覚えたハインリヒは、八か国語を流暢に操る不思議な日本人青年・秦漣太郎をガイドに雇う。そして漣太郎と行動をともにする中で、ハインリヒは「異人の守り手」と噂される、陰ながら外国人を守る日本人たちがこの横浜にいることを知り――。 手に汗を握る興奮に、深い感動。大エンターテインメント時代小説、ここに開幕!(「BOOK」データベースより)




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    No.1:
    (5pt)

    百科事典で読者をどつき倒す作家・手代木正太郎が時代小説に進出。登場人物がとにかくマニアック!

    博覧強記という言葉では不足なぐらいの圧倒的知識量を惜しげもなく突っ込み、個人的には「百科事典で読者をどつき倒すスタイル」と称させて頂いている作家・手代木正太郎がなんと時代小説に進出。下調べの量が作品の完成度に直結するジャンルだからある意味進出するのは時間の問題だったかも知れないが、どういう形でのあのマニアックぶりをぶつけてくるかという一点に興味を抱き、拝読。

    物語は慶応元年の横浜にハインリヒというドイツ人が来訪した場面から始まる。このハインリヒ、ドイツ連邦の小国で牧師の息子として生まれながらアメリカからロシアまでを股にかけて商売を繰り広げ一財産を築いたという辣腕の持ち主。

    そんなハインリヒだが「金は溜めたが、名誉が欲しい」とロマンだか功名心だかよく分からん動機に駆られて世界を歴訪。開国したばかりでまだまだ未知の部分が多い日本で自分を名士の地位に押し上げてくれる様な発見は無いかと気持ちを逸らせる。ホテルを出て横浜の街を散策していたハインリヒだが、妙に人懐こい雰囲気の日本人の青年に話しかけられて驚愕する、なんとその青年ドイツ語で話しかけて来たのである。

    自身も語学に通じたハインリヒは青年に興味を持ち話し込むが、彼は自分を「案内人」だと名乗り自分を雇わないかと持ち掛けてくる。ならばとハインリヒは大君の住む江戸も案内できるかと問うが横浜から十里以上離れられないという幕府の規制に加え「攘夷浪士」なる厄介な連中がいると警告する青年。

    湊漣太郎と名乗る青年とその場では別れたハインリヒだったが、面会したイギリスの通訳官サトウからも攘夷浪士の厄介さを警告される。特に宗教的妄執から外国人を「穢れ」として排そうとする狂信的攘夷主義者に鎌倉でイギリス人士官二人が惨殺されたというのだ。翌日漣太郎を尋ねたハインリヒは改めて彼を案内人として雇い、取りあえず保土谷へ京へと向かう公方様の行列見物へと向かう事にするが……

    タイトルを見た時には手塚治虫の「陽だまりの樹」の主人公・伊武谷万二郎みたいな外国から来た要人の警護に当たるお侍様でも主役にするのかと思ったのだけど、やっぱりそこは手代木正太郎。案の定というかマニアックさの極みみたいな内容だったのである意味ご期待通りだったというか……

    上で紹介させて頂いたドイツ人商人のハインリヒ、どこか誇大妄想狂染みた所のある人物で巨万の富を築いた後にロマンの道に走った男というので「似た様な人物いるよなー」と思いつつ「でも日本との関りは聞いたこと無いなー」と思ってたら……「え、あの人物来日してたの???」と第一章のオチで綺麗にやられた。世界史上に名を遺した筈の人物なのにその生涯についてはさっぱり知らん事をいきなり思い知らされる……でもこのハインリヒはまだこの作品ではお優しい方かもしれない。

    物語の方は狂信的排外主義者の集団「鴉」から外国人を守ろうとするミステリアスな青年・漣太郎とその仲間たちの活躍を描いているのだが、その仲間がもう完全にマニアック。

    フランス人シャルル・ド・モンブラン(確かこの人、木内昇の「万波を翔る」にも出て来たな)の愛人で西洋のドレスに身を包み、銃器を扱わせれば達人級という女性・フランスお政
    日本人離れした巨体に恐るべき膂力を漲らせながら、その頭脳は誰よりも明晰でヘボンの日本語和英辞書編纂を手伝う男・岸田吟香
    佐野藩剣術師範の家に生まれ新陰流免許皆伝という恐るべき剣の腕を誇りながら西洋画の世界に魅せられて挿絵画家ワーグマンに弟子入りを志願する剣士・高橋佁之介(由一)

    ……ほらね、頭の中が「???」となったでしょ?慌ててWikipediaで検索した方もおられるかもしれない。そして恐ろしい事にこの三人全員実際に慶応元年には横浜に居たのである(←当然Wikipediaで調べた)。その場にいた筈もない幕末の有名人をご都合主義で搔き集めてくるのではなく、実際にその当時その場にいてもおかしくない人物に肉付けしてキャラを造形するのだから恐れ入る。

    形式の方は連作短編で三章構成なのだけど、話が進むにつれて登場人物がどんどんマニアックに。俗に鎌倉事件とも称されるイギリス人士官殺害事件自体が誰でも知ってる生麦事件や東禅寺襲撃事件などに比べれば攘夷主義者の起こした事件としてはかなりマニアックなのだけど、第二章の中心的人物である内藤豊助とかWikipediaを紐解いても「鎌倉事件」で一回しか名前が出てこないっていう……

    第三章もこれまた凄い。「アメリカ彦蔵」ことジョセフ彦なら誰でも知ってるけどジョセフ彦と一緒に漂流した仙太郎なんて誰が知っているのやら……でもその歴史の中に残した卑屈極まりない態度に肉付けしてしっかりと物語の主役に据えちゃう、それが手代木正太郎流時代小説。

    それじゃマニアックさだけに頼った作品なのかと言えばさにあらず。ライトノベル界で屈指のクセ者として知られた作家だけあって雰囲気の方は実におどろおどろしい。時代劇にしてもちょっと時代がかり過ぎている様な文章に面食らう方もおられるかもしれないが、ライトノベル作家としての作者を知っていると「随分と抑えているなあ」と本作における講談調の抑制には逆の意味で驚かされた次第。

    ただ、個人的にはこの攘夷という排外主義の荒れ狂った時代において、「宗教的妄執に取りつかれた様に老若男女も社会的地位も関係なしに組織化する事無く繋がっている排外主義者」として語られる「鴉」たちの描き方が印象に残った。ネットという匿名の世界でこれという信念も無しに排外主義を振りかざす名も無き群衆がモロに被ってくるからだ。

    その意味で第三章の卑屈極まりなく、「心配だ、心配だ」と我が身を襲う不安に怯えて「俺は何も見てねえし、知らねえ」と泣き喚くばかりで自ら事に向き合う姿勢を見せようとしない元漂流民のサム・パッチこと仙太郎の姿にサイレント・マジョリティとして排外主義を見て見ぬふりをする層を重ねる事は無理があるだろうか?

    即ち描かれているのは慶応元年の横浜であっても、作者がこの舞台を用いて照射しようとしているのはまさに今この場にある我々の社会では無いか……そんな気すらしてくる。マニアックな歴史群像の中に巧妙に作者なりの警鐘が織り交ぜてあるのでは、という読み解き方をする事も出来ると思った次第。

    主人公である漣太郎自身のミステリアスな正体は明かされないままであるし、主人公とその仲間たちが絡むであろう幕末の日本を訪ねた外国人(要するに作者の次なるネタ)もまだまだいるであろう事から続刊には大いに期待したい。手代木正太郎のマニアックな知識で張り倒されるのは何よりも贅沢なのである。
    異人の守り手Amazon書評・レビュー:異人の守り手より
    409407239X



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