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レビュー数1

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No.1:
(7pt)

希望

ユーモア、ファンタジック、ダーク。
あらゆるジャンルの独特の味わい、それらをほどよく織り交ぜ、
読者にひとときの”夢”を見せる作家、初野晴の寓話ミステリ。

脚が不自由な鞄修理人「シズカ」、人語を話す赤毛のサル「ノーマジーン」。
突然出会った二人(?)は、荒廃した世界の中で、共同生活を営んでいる。
シズカは初めは当惑しつつも、徐々にノーマジーンのことを理解し、受け入れていく。
そしてクリスマスの夜、シズカは自分の本当の気持ちを悟り、彼女の心に希望が生まれた。
ーしかし、シズカは残酷で、そして悲しい真実を知る。

初野晴の作品は読みやすい文体(これがいわゆるライトというものか?)でありながら、その裏には
社会派と形容しても過言でない重い要素が含まれている。
そして登場人物の、まるで見てきたかの如くリアルな感情が、読者に伝わってくる。
特にこの物語は、シズカのどことなく人生に失望したような(言い過ぎだろうか?)言動が印象深い。
が、ノーマジーンと出会うことで、次第に生きる喜びを噛みしめていく。
そしてラストでは、シズカは葛藤を乗り越え、自分の本当の気持ちをノーマジーンに告げる。
そのシーンは、読者に感動と、希望を与えるのである。

ーそう、希望。
この本の他に、初野晴の著書「1/2の騎士」「水の時計」では、ラストにて、今後を予測させる展開となっている。
ハッピーエンドなどという単語では表せない、なんとも言えない余韻を残してくれる。
私はそれに何度も感動させられてきた。
感動とか、絆とか、そして希望とかをミステリに求めるのであれば、初野晴の名前は外せない。
ノーマジーン
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