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ふくろう



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【この小説が収録されている参考書籍】
ふくろう
ふくろう (講談社文庫 か 131-2)

ふくろうの評価: 4.60/5点 レビュー 5件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.60pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全5件 1~5 1/1ページ
No.5:
(5pt)

ふくろう

主人公を取り巻く人々のやさしさ、愛情の深さを感じ、前に進む主人公が好ましかった。
ふくろうAmazon書評・レビュー:ふくろうより
4062176173
No.4:
(4pt)

今読みたい一冊

ひょんなことから自分の出生に疑問を持ち、本当の自分とは何かを考える青年の話。
実際に起きた江戸城での刃傷事件をもとにした話なので、中盤のいじめのシーンは感情移入してると結構キツイ。
とはいえ、この作者の話なので、主人公の周囲の人物はあたたかい気持ちにさせてくれる人物で固められており、最後にはきちんと癒されるので安心して読み進められる。

現代でも最近はひきこもりや自殺する前に殺傷事件を起こすなどということが社会問題として出てきている。
同じように平和な世の中、狭い社会で起きた事件をもとにした話を読んで、どういうところから防いでいくか考えてみてもいいかもしれない。
ふくろうAmazon書評・レビュー:ふくろうより
4062176173
No.3:
(5pt)

江戸の史実と現代を結ぶ作品

古文書を学んでいる関係で、故あって「千代田の刃傷」を調べていました。
netで調べても事件のあった場所や時刻についての記述が乏しく、梶さんならばきっと資料を調べているんだろうと、的外れな期待をして本作品を読みました。
読み始めて、本来の目的を忘れ、一気に読み通してしまいました。
主人公を松平外記本人ではなく、ひそかに養子に出された次男であるところがミソです。いじめという人間社会共有の課題に外記が下した解決策は、当時江戸城内の風紀を正した義挙とされました。幕府の沙汰も異例ならば巷でも歌舞伎浄瑠璃の演目や小説となりもてはやされたましたが、現代感覚ではこれではただのテロリズム頼みになりかねません。そこを自身の出自を知った主人公がすっきりと収めてくれて、ほっとする大団円を迎えます。
ところで、史実は?なのですが、おおよそ本作品の描写で納得しました。拍子木役の件などは他資料とも符合します。
ただ同時に参照した明治時代の講演「千代田刃傷松平外記」では八千代は外記の嫁の名前になっています。また事件当日外記は夕番ではなく請番というところが違ってますが、これを機会にまた調べます。
ふくろうAmazon書評・レビュー:ふくろうより
4062176173
No.2:
(5pt)

「いじめ」をテーマに人の醜さ・弱さそして優しさ・靱さを問う傑作時代小説

江戸時代に起きた「千代田の刃傷事件」という史実を基にした(らしい…読後知りました)「いじめ」をテーマとした時代小説。

「いじめ」をテーマとした小説で近年読んだものとしては 川上 未映子の『ヘブン』あるいは湊 かなえの『告白』…
いずれも、人間のやりきれないダークな部分をある意味“是”としており、読後感の悪さは共通していた。

本書の読後感は、人としてのあるべき姿を素直に表現してくれたという意味で清々しいものとなっている。

もちろん「いじめ」の内容は陰湿であり、そのいじめに対する報復としての刃傷事件は、勧善懲悪の典型ではあるのもの
やり切れない思いが残る。

しかしながら、著者は主人公をいじめを受け、刃傷事件を起こした本人とせず、その息子としたことでテーマに広がりを待たせ
「人としてのあるべき姿」を「優しさ」を「靱さ」を見事に表現している。

主人公が語る最後のひとこと=自らの名を名乗るその一言に、様々な人々の想いをエピソードを題名の意味をそしてテーマの答えを
収斂させた構成も見事だ。
ふくろうAmazon書評・レビュー:ふくろうより
4062176173
No.1:
(4pt)

江戸後期「千代田の刃傷」を素材にした武士社会のイジメをリアルに描く傑作の時代小説

「イジメ」「殿中」「刃傷」「敵討」と揃えば「忠臣蔵」しか思い浮かばないものだから、
江戸時代後期の「千代田の刃傷事件」は全く知らず、このテーマだけでも読んだ価値がありました。

連日、報道されるように、学校でのイジメがあとを絶たない。自殺にまで追い込まれる。陰湿さはエスカレートし、肉体への暴力行為だけではない。無視蔑視、罵詈雑言・誹謗中傷・流言飛語、責任転嫁で精神的にダメージを与えるものが増えている。よってたかって弱いものを痛めつけ、それを楽しんでいるのである。
こんな外道を許せない。文政6年、ついに堪忍袋の緒が切れ、彼は江戸城内にて非道のものらを討ち果たした。3人が即死、2人が重傷、本人は自刃。

現代のイジメの構図をそのまま江戸時代の武士社会に無理にはめ込んで作ったお話かと思っていたら、その逆であった。さすが、江戸の朝顔栽培という史実を軸に傑作『一朝の夢』を著した梶よう子である。「甲子夜話」等の古文書を考証し、当時の武士社会こそ典型的なイジメ社会だったという認識で書いたものと思われる。この史実を知らなかったわたしには驚きの物語だった。知る人ぞ知る。芝居、映画にもなり、林不忘には『魔像』という小説があるようだ。

「松平外記 江戸時代後期の武士。幕臣、西丸書院番士。裃の紋に墨をぬられるなど、古参者のいじめにあい、文政6年(1823)4月22日殿中で刃傷におよび、本多伊織ら5人を殺傷し、自刃した。享年は33歳。18歳、27歳説もある。江戸出身。名は忠寛。(日本人名大辞典)」

旗本には人気のあった就職先である。その西丸書院番に番入りした外記が古参のものから受けるいやがらせの数々が詳細に描かれる。読んでいていたたまれなくなるほど凄まじい。江戸後期ともなれば武士社会の綱紀は乱れ、書院番には武士道という矜持はなく、古参が新参を悪習の中に押さえつけ、ただ酷使する職場だった。身分が固定し、出世のチャンスは限られている。だが、外記は家柄がよく、剣の使い手でもある人格者、いわば見所のある清廉の士だった。だから、理不尽な悪意と憎悪、妬み、嫉み、蔑み、謗り、皮肉、嫌味、集団化したワルの仕打ちが集中した。現代でもそうだが、イジメは絶対に反抗できないものに対して行われる。反抗できないことがわかっているから、笑いながら他人を陥れて、涼しい顔をしていられるのだ。外記は反抗できない。外記にとってはまずお家大事である。そして妻と子を守ることであった。だから、満座の前で恥をかかされ、カネをふんだくられ、盗人といわれて、毎日屈辱にまみれながらも、彼らには決して逆らおうとはしなかった。それがまた彼らを増長させる悪循環。この病的で残酷な地獄図はまるで今のイジメの構図そのままではないか。

遺恨で彼が白刃を振るうことになればお家の断絶は避けられない。残された家族の行く末を思えば………。手にかけるまでの心理の綾が女性らしい細やかな筆致で綴られる。タイトルの「ふくろう」は外記が自ら彫刻した木製の根付けである。誰にも内心を見透かされず、事に及んだ外記。生まれたばかりの次男に遺したこの「ふくろう」がいくつかの場面で実に効果的に使われている。読後振り返れば、誰知らぬ心底を表現したのがこの「ふくろう」だけであったことに気づかされる。プロットはアナクロで平板な復讐譚なのだが、この絶妙なしかけがあってはじめて、外記の武士として人間としての深さに胸をうたれるのだ。

二十数年後、伴鍋次郎は両親、身ごもった妻と幸せな家庭にあったが、西丸書院番を拝命したある日、出生の秘密に触れて………。というのが実は物語のスタートで、「千代田の刃傷事件」の後日談がこの作品である。
生みの親と育ての親。身ごもった妻。家族愛、そして武士の一分。伴鍋次郎もまた葛藤のうちにある決意をする………と、これもおなじみの人情噺なのだが、最近の人情話は変化球が多く、ここまでストレートな家族の絆は久々だったせいか、著者の巧みな語りにホロリとさせられました。
ふくろうAmazon書評・レビュー:ふくろうより
4062176173

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