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「病は気から」を科学する



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【この小説が収録されている参考書籍】
「病は気から」を科学する

「病は気から」を科学するの評価: 4.47/5点 レビュー 15件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.47pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全15件 1~15 1/1ページ
No.15:
(4pt)

仮想現実の鎮痛剤

宗教儀式はつながる体験、奇跡とは解釈、痛みを起こしているのは、問題のある関節そのものではなく、脳による関節の認識の仕方。なるほどと思うものばかり。
「病は気から」を科学するAmazon書評・レビュー:「病は気から」を科学するより
4062179377
No.14:
(5pt)

心だけに頼って病気を治せと言っているわけではなく、しかし、医学における心の役割を認めないのも正解とは言えない

実体のない非物質的な治療が、実際に物質的な効果を出しているという事実に対して、その信憑性や検証データを分析しながら考察した良書。

正直に伝えるプラセボ、医師の説明や薬を飲むという儀式、期待と条件付けの同時利用、社会からの孤立が健康に害を及ぼすことなどが、いくつかの検証結果を元に説明されていて、非常に興味深かった。

特に期待と条件付けの同時利用は、薬の量を少なくすることができれば副反応や医療費を減らしつつ、薬の効果も持続できるという素晴らしいものだと思う。

しかし、薬の量を減らせるという研究に、自分たちの儲けが少なくなる製薬会社は資金を援助しないという現実的な問題もあるため、研究が進まないのが歯がゆい。

「おわりに」にも書かれているが、心だけに頼って病気を治せと言っているわけではなく、しかし、医学における心の役割を認めないのも正解とは言えない。

つまり、マインド・ボディに対する先入観を打開し、物理的な介入や薬への依存を強めるよりも健康対策に心を取り入れた方が、実はより科学的で、根拠に基づく治療法だと気付いてもらうことが重要だと思う。

検査、薬、手術といった物理的な手法と、プラセボを上手に利用した代替療法を組み合わせた手法。

その両方を組み合わせた患者のための医療システムが実現することを願っている。
「病は気から」を科学するAmazon書評・レビュー:「病は気から」を科学するより
4062179377
No.13:
(3pt)

科学はしてない

本のタイトルに興味を持ち購入。しかし、内容にそぐわないタイトルでした。よく考えると、イヤ、よく考えなくても、この本は翻訳本でした。当然タイトルも翻訳。もちろん直訳ではなく、意訳。かけはなれてはいないけども、そぐわない。さて、゛病は気から゛ということわざの語源は、遡っていくと、紀元前の中国最古の医書に辿り着くそうです。即ち゛全ての病は気から生じる゛。ただし、この場合の゛気゛とは気持ちの気ではなく、気功の気だと思います。気エネルギー、ヨガなんかで言う゛プラーナ゛ですね。このエネルギーの滞ったところが病になるわけですね。一方で17世紀フランスの劇作家、モリエールが発表した戯曲゛病は気から゛、これが一般に使われていることわざの語源です。この場合の゛気゛は気持ちの気ですね。本書はこちらの方、気持ちの気の方です。即ち、゛病は気持ちから゛゛病は気の持ちよう゛について述べてます。主にプラセボ効果をテーマとしています。ここで内容にそぐわないタイトルだと言った理由を述べましょう。ひと言で言うと、゛科学していない゛のです。ページ数は389ページもありますが、100%全て活字。科学する、というタイトルのわりには、グラフの一つもない。図版も写真も、それどころか何のデータも、科学的検証もない、ないないづくしなのです。そのわりにページ数だけは多いものだから、読むのに時間がかかる。しかし、納得いくものがないので、読後、心に残るものがない、響いたものがない、要するに、タイトルが立派すぎて、タイトル倒れの本でした、というのが結論です。内容のわりには、値段も高すぎ。
「病は気から」を科学するAmazon書評・レビュー:「病は気から」を科学するより
4062179377
No.12:
(5pt)

プラシーボ(プラセボ)効果を探った傑作

プラシーボ効果の良い研究書は数があまりない。
プラシーボを「トンデモ科学」「似非科学」的な立場か、「宗教的」「催眠作用的」な方向から断罪するものが多い。
本書は、著者が実際にプラシーボ治療をする医師や研究機関に足を運び、ていねいにルポをしている。最初は懐疑的だった著者自身がプラシーボに賛意を表すようになってくる過程もつぶさに描かれている。
プラシーボ効果を研究しようとする大学などに対して、薬の販売減少を恐れる製薬会社が研究補助を打ち切るといった事実がわかってくるにつれ、この本の重要性が増してくる。
はたして、「病気」とは何なのか? 「治る」とはどういうことなのか? など現代医学だけでは答えきれない、多くの問題について考えさせられる良書。
「病は気から」を科学するAmazon書評・レビュー:「病は気から」を科学するより
4062179377
No.11:
(5pt)

個人的に興味深かった内容を簡単にまとめました

(14ページより)

「心の治癒力を利用するために、根拠や理性的な思考を捨て去る必要はもうない。
 そこには科学が存在するからだ。」

・体を物理的に捉える "西洋医学"
・症状より人間に根差した "東洋医学" (を含むその他の医療)

非物質的要因が体に与える影響を、最新の研究を交えて科学的に考察する本です。

個人的に興味深かった内容を簡単にまとめます(先頭の数字は参照ページです)

   第1章 偽薬
26 自閉症治療の為の "セクレチン" の効果の正体とは?
31 偽の外科手術 の効果とは?
40 パーキンソン病患者への "プラセボ注射" の力とは?
45 プラセボ効果の背後に "生化学的なプロセス" が示された最初の証拠とは?
48 プラセボ効果の "2つの限界" とは?
    
    第2章 型破りな考え
57 プラセボ効果が頻繁に "姿を変える" 原因とは?
62 正直に伝えるプラセボ の効果とは?
65 実薬とプラセボの "併用" のメリットとは?
70 実薬の副作用の正体 "ノセボ効果" とは?
76 薬の効力を高める可能性が高い "飲み方" とは?
77 プラセボの効果を "最大限に引き出す" ための重要な要素とは?
    
    第3章 パブロフの力
86 95~100%の確率でプラセボを起こす "条件づけたプラセボ" とは?
92 プラセボが "免疫系" にも作用する理由とは?
104 "条件反射" を利用したプラセボの2つのメリットとは?
    
    第4章 疲労との闘い
109 高地で感じる "苦しさ" は幻想?
112 "マラソンランナー" が倒れる本当の理由とは?
115 疲労感の正体 "セントラルガバナー" とは?
117 "緊急事態" になると人が離れ業をやってのける理由とは?
122 「患者が不治の病だと信じ込めば、不治の病になってしまう」とは?
128 「慢性疲労症候群(CFS)は、体の病気でも、心の病気でもない。その両方なのだ」とは?
    
    第5章 催眠術
135 "磁気" による治療の正体とは?
142 催眠術の効果を示す "信じれば見えてくる実験" とは?
144 催眠術で "血流" をコントロールする?
153 実験で成果が出ているのに "催眠療法" に証拠がないと言われる理由とは?
    
    第6章 痛み
160 米国史上最大の "薬物汚染" の正体とは?
162 "注意力" と痛みの関係とは?
172 従来の "催眠術" の欠点とは?
174 物理的な効果を引き起こす "ラバーハンドイリュージョン" とは?
177 催眠術や他の心理療法が抱える "問題" とは?
    
    第7章 患者への話し方
184 "帝王切開" による出産を避ける為の最良の方法とは?
187 "自宅出産" の方が実は安全?
196 痛みと不安を軽減する "コンフォートトーク" とは?
198 これから起こる "苦痛を伝える" ことの弊害とは?
206 「要するに、私たちは人間であり、機械ではない」とは?
    
    第8章 ストレス
208 災害発生時に "心臓死" が急増する理由とは?
215 "慢性的なストレス" による健康被害のメカニズムとは?
218 ストレスは健康被害に加え "老化" を加速する理由とは?
225 養子の "40代での死亡率" に最も相関の高い要因とは?
230 ストレスによる悪影響を避け "能力を発揮する" ための方法とは?
232 慢性的なストレスにさらされている人の "脳" は変化する?
234 幼児期のストレスが "側坐核" に与える影響とは?
    
    第9章 マインドフルネス瞑想法
250 瞑想には時間がかかると思われますが、実は逆なんです」とは?
258 熟練した僧が瞑想している時に "脳で起きていること" とは?
261 瞑想が "脳の構造" を変化させ、ストレスに強くなる理由とは?
    
    第10章 健康長寿
268 コスタリカ北西部の "ニコヤ半島" の住人が健康である最大の理由とは?
274 社会からの孤立がもたらす "健康被害" の大きさとは?
277 誰かと一緒にいても "孤独" を感じる条件とは?
285 "忍耐強い子供" に最も相関の大きい要因とは?
289 "高齢者" の健康状態を高める最良の方法とは?
    
    第11章 電気の刺激
306 心拍コントロールシステムの一つ "圧反射" とは?
307 心拍数を変化させるシステム "呼吸性洞性不整脈(RSA)" とは?
307 "心拍変動(HRV)" と心疾患死亡率に相関がある理由とは?
310 「HRVが重要なのは心臓の状態が分かるからより、脳の状態が分かるから」とは?
315 免疫系という凶器から人を守る "炎症反射" とは?
317 "迷走神経" を良好な状態に保つために重要なこととは?
325 神経を電気的に "刺激" する治療のメリットとは?
    
    第12章 神を探して
334 "信心深さ・霊性" が健康に与える影響とは?
339 健康に良い効果を与える信仰心の "条件" とは?
344 宗教で行われる "儀式" の究極の目的とは?
348 "高い目標" を持つと、感じるストレスが小さくなる理由とは?
355 "宗教" が健康に与えるメリットの正体とは?
362 カトリックの聖地 "ルルド" が最優先していることとは?
    
    おわりに
371 "代替医療" に頼り過ぎることの危険とは?
378 健康における "心の役割" が重要視されない2つの理由とは?

最後に心に残った筆者の言葉を紹介します。(383ページより)

「私の望みは "物理的な介入" と "薬への依存度" を強めていくよりも、
 健康対策に "心" を取り入れた方が、実はより科学的で、根拠に基づく治療法だと気づいてもらうことだ」
「病は気から」を科学するAmazon書評・レビュー:「病は気から」を科学するより
4062179377
No.10:
(4pt)

プラセボだって有効利用

タイトルに書いたとおり、プラセボだって効果あるし、プラセボしか効果がないに近いような病気もあるのだからプラセボを有効利用しましょう、お金もかかりませんし、というお話。
プラセボ効果を得るための方法が幾つか紹介されている。代替医療でも超高額なものもあり、嘘を嘘で塗り固めたようなものもあるので、代替医療を使う側にもリテラシーが求められる。ただ、代替医療で偽薬に払うお金が多ければ多いほどプラセボの効果も高いそうで、複雑な気持ちにさせられる。その判断基準についてもう少し強く書かれていたらなぁと思う。
「病は気から」を科学するAmazon書評・レビュー:「病は気から」を科学するより
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No.9:
(5pt)

薬の力は偉大だが、付き合い方を少し変えてみませんか?

この本はオーラや波動といったスピリチュアルなもので病気を治すと言っている本ではありません。
ただ、製薬会社にとっては不都合な真実が多い本ではないでしょうか。
この本では、現在の技術優先の医療や最優先で薬を与える医者を問題視し、プラセボ効果や思い込みなど人体に負荷を与えないで、特定の病気を治療することができると述べられています。
例えば、パブロフの犬の実験では、犬に音を鳴らしエサを与え続けると、音を鳴らすだけでエサが食べれると思い、犬がヨダレを垂らすというものがあります。
これと同様のことが人の体でもできます。薬によって体内の免疫力を上げている場合、同時に角砂糖を一緒に飲み続けることで、角砂糖で体内の免疫力が薬と同等の効果を示します(あくまでも例えですが)。 詳しくはこの本を読んでいただければと思います。病気との付き合い方や薬との関係を考えさせてくれます。
「病は気から」を科学するAmazon書評・レビュー:「病は気から」を科学するより
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No.8:
(4pt)

心は体に物理的な変化をもたらすか?

本書は、心が体に”物理的な”影響を及ぼし得るか、と言うことを知るために科学ジャーナリストである著者(女性)が、多くの医者や研究者たちの取り組みを調べていく”旅”です。この”旅”が描写されていくので結構長く、翻訳本なので若干読みにくいので結論だけ知りたければ最後の「おわりに」を先に読んでしまうことをお薦めします。著者のいいたいことはここに全てある。体調が悪ければ心も沈む、その逆もしかり。これは誰でも経験していることでしょう。しかし、心の持ちようが体調を左右する、と言われると、胡散臭いインチキ療法のようなものが頭に浮かぶのでは。しかし良く考えれば、心=脳も人間の臓器であり、デカルト流に心を体と完全に切り離すことはできないという気もする。そもそもホメオパシーだとか民間療法のようなものとか、宗教・信仰というのも、人間の心のあり方に影響を及ぼすことで、体にも影響を及ぼしているのかもしれない。本書に示される最新の調査結果では、偽薬効果(プラシーボ効果)と同程度の効果しかないクスリもあるようだ。と言うか、プラシーボ効果で心へ影響することが、実際に痛みの軽減や炎症の抑制などに影響することが示されつつあるらしい。そもそも、気持ち悪いものを見ることで吐いたりするのが人間であり、それは脳に入った情報が体に影響を及ぼす効果を示している。ストレスや環境の変化を受け取り、それに応じて体調を変化させるのは、進化の過程で人間が身につけた機能のようである。それを医療に応用することで、薬品の摂取量を軽減させることができるのではないか、ということだ。近代医学を否定する必要ないが、近代医学には否定されてきた代替医療とか自然医療、果ては宗教儀式のような、心が体に及ぼす影響をも近代医療に組み合わせていくことが必要なのかもしれない。しかしながらそのような効果を調べる研究は、医薬品の削減に繋がってしまうので大もうけしている製薬会社からはサポートされない。本来は医者は患者と十分に話をすることの方が効果があるかもしれないのに、実際は症状を数分聞いてクスリを出して効率よく患者を診て終わり。これは近代医療の資本主義社会化なのかもしれない。
「病は気から」を科学するAmazon書評・レビュー:「病は気から」を科学するより
4062179377
No.7:
(5pt)

人の心を科学的に掘り下げた逸品

プラセボ効果と言うと、優秀な科学者たちは、現在の科学を確保するために適切な実験デザインによって排除された「効果のないもの」と思うのではないでしょうか。
これは一面の真実だと思います。
ですが、臨床面では決してその限りではないと言うことが本書を通じてよくわかります。

この本は心身症から老化などまで、12のテーマに区切られており、そのテーマごとに実際に患者や研究者に取材をし、その研究によっていかに人の心が体に影響を与えるのかを見ていくと言うものです。
そのメカニズムは脳科学の発展や生化学的な介入によって徐々に明らかにされつつあり、大きな可能性を感じさせてくれます。

しかし私たちは時に、その心がもたらす効果と言うのものをよく知ってるのではないでしょうか。
子供が転んで膝を擦りむいた時に、簡単なお呪いをする、あるいはしてもらった人も多いと思います。
人間とは合理的でない側面が必ずあります。行動全てに科学的な意味を求めてるわけではないのです。
故に代替医療に頼ることもしばしばあります。

しかし代替医療の専門家たちは現在の西洋医学に対し真っ向から反対し、時に患者の命を奪うこともあります。
人の心が持つ可能性と言うものに西洋医学の専門家や私たちが目を向け、代替医療もそのような角度からアプローチすることによって、西洋医学と代替医療共に補完しあえるのではないでしょうか。

そうして心と体の調和を達成した時に初めて、本当の健康が達成される。
そんな風に思わされます。
「病は気から」を科学するAmazon書評・レビュー:「病は気から」を科学するより
4062179377
No.6:
(5pt)

内容は抜群に面白く優れているが、出版社がダメ

「病(=身体)」は「気(=心)」から、という心身医学的スタンスから最新の知見を網羅した、抜群にエキサイティングで優れた書である。翻訳もこなれていてとても良い。著者のJo marchantは以前Natureのeditorだったというから、このような領域の話題を誰にでもわかるように書くにはうってつけの人材だ。プラセボ効果から始まり、マインドフルネス、長寿の秘密、痛みの治療、と幅広い領域をカバーしている。どれも厳密な研究結果を元にした記載ばかりであり、一方からの意見だけでなく反対意見も公平に載せているのが素晴らしい。現代医学はまだまだ発展途上であり、現時点で万能ではない。「現代医学では治せない・わからない」疾患は多い。このような疾患で苦しんでいる方にとって、本書は非常に大きなヒントになり得るだろう。

あまりにも素晴らしいので★は減らさないが、ダメ出しを2点。本書の翻訳・出版に目をつけた講談社の炯眼には敬服するが、詰めが甘かった。

1.タイトルが良くない。
 原題は"A journey into the Science of Mind Over Body"である。ここでは"Over"に込められた意味に想像を馳せたい。「病は気から」というフレーズは確かに万人にわかりやすいが、「気のせい」というネガティブなニュアンスも含んでおり単なる精神論に堕する危険性がある。本書はあくまでも"Science"への道しるべなのであり、精神論を述べたくだらない書物などではない。もう少し気の利いたタイトルを付けて欲しかった。

2.引用文献の詳細が本書には記載されていない(オンライン参照のみ)。
 これは絶望的にセンスが無い。Onlineでは参照出来るようになっているが誰もがすぐにアクセス出来るわけではないし、気軽に文献に当たることが出来ない。これでは本書の有用性が半減である。本当に不親切な仕様であり、残念で仕方がない。編集者はまともに論文の1本も精読したことがないのだろうか?猛省して次回からは改善させて欲しい、そうでなければ科学系の本を編集するにはセンスがないので他の仕事を探した方が良い。おそらく、みすず書房だったらこんな暴挙には出なかっただろうと思ったりもするが、講談社が売った方がたくさん売れていいだろうな、という気もする。
「病は気から」を科学するAmazon書評・レビュー:「病は気から」を科学するより
4062179377
No.5:
(5pt)

プラセボは希望だ

リオ五輪はロシアの陸上チームが出場禁止になるなど、ドーピング問題の根深さが広く世間に認知された大会となったが、薬物を摂取するのではなく、自分の体内で調達できるとしたらそれはドーピングとなるのか。これは仮定の疑問ではない。脳内物質の量や組み合わせを自分でコントロールできれば、身体能力の限界を超えた危険な運動に対する防御装置のストッパーを外すことができる。たとえば本書でとりあげているイギリスの長距離選手、モー・ファラー。彼はメダル候補でさえなかった前回のロンドンオリンピックで5000メートル、10000メートルの2つの金メダルをとった直後に腹筋運動をしてみせた。リオ五輪でも2冠を達成したファラーの脳は、「感情・感覚としての疲労」というストッパーの外しかたを知っているのだろう。「脳を再教育する」という表現を本書では使っている。それが簡単なことではないゆえに薬物にはしる選手も少なくないのだろう。

本書はスポーツに限らず、人は脳内の意識と無意識をコントロールすることによって身体の機能や状態に影響を与えられることを実証するさまざまな実験や事例を紹介している。医療におけるプラセボは、偽薬やインチキ療法と結びつけられることも多かった。たとえば、「プラセボ以上の効果がない」というのは代替医療に対する典型的な批判である。しかし「プラセボ」、つまり「心を騙して病気と闘わせる、という驚くような方法」に効果があるとしたら、そしてそこに科学的根拠があるとしたらどうだろう。

『がんが自然に治る生き方』という本で、著者のケリー・ターナーは末期がんが寛解した事例が奇跡と言われるほどには少なくないことを知り、そうした逸脱事例を「たまたま幸運だった」ということですませてしまうことには倫理的な問題があるのではないかという問題意識で、劇的寛解をとげた人たちが共通で実践していたことは何であったかを調査している。ターナーの調査から、末期がんが自然寛解した患者が共通して実践していたことが9つ挙げられているが、そのうち7つが「こころ」に関連することだった。本書『「病は気から」を科学する』の著者、ジョー・マーチャントもプラセボに懐疑的な態度をとることが「身体の健康にかかわるある重要な要素」の見逃しにつながっているのではないか、という問題意識からこの本を書いたという。いまや西洋医学の伝統であったところの身体二元論への根本的な見直しがあらゆる方面から行われている。

本書はプラセボは病気の背後にある生理学的な状態を変えることはできないが、痛みの緩和と生活の質向上には大きな役割を果たすという。そうした「効力」こそが「プラセボの有効成分」である、と著者は指摘する。プラセボは、間違いなく「効く」のだ。患者にそれが本来の薬ではなく「プラセボである」ということを正直に伝えても、それを飲んだ患者はなんの治療も受けなかった患者より著しい回復を見せたという。面白いのは、プラセボの効き方は種類によって異なり、効き目は患者、病気、文化によって変化するという点だ。治療が大げさであるればあるほど、高価であればあるほど、プラセボ効果は高くなることもわかっている。プラセボが心の薬であるからこそこうした揺らぎが生じるのだろう。今後研究が進めば、患者の性格や生育環境などによって、より効きやすいプラセボを特定することも可能になってくるのではないか。

また、人に手渡してもらったプラセボは、自分で飲むプラセボよりも効くらしい。自分のために処方してもらったという安心感からそうなるというのだ。代替医療においては医師と患者のやりとりが標準治療の場合よりもより濃密になる傾向がある。プラセボはノセボ効果(ある種の恐怖心、不安から実際に体に現われる症状)を取り除くことによって機能する場合があるらしいが、代替医療が標準的な西洋医療と比べてその効果を科学的に裏打ちされていないにもかかわらず一定の効果を出し、人をひきつけているとしたら、それは医師との信頼関係がより強いからではないだろうか。代替医療を選ぶ患者はときに家族や主治医の反対を押し切り、自分の意志でその治療者にたどり着いていることが多いから。標準治療の現場においても、乳房生検や腎臓および血管の措置を受けた患者のうちコンフォートトークを受けた患者が必要とした鎮痛剤は非常に少なくて、合併症もずっと少ないという。緩和ケアを受けたがん患者のQOLはそうでない患者よりずっと高く、平均生存率も高くなったという。こういう研究結果が明らかになると、緩和ケアというのは生存の望みのない患者だけのものではないような気がしてくる。腰痛でも風邪でも体調が崩れると気弱になったり気分がふさいだりするものだ。その状態をとりのぞくだけで極力薬の頼らず回復がみこめるとしたらこれほどいいことはないだろう。末期がんの患者の場合はなおさらだ、生活の質を最大限に高めることに焦点を絞り、最後まで抗がん剤にしがみつくことなくそれ以外の支援を受けながら生きるほうが、「治療と希望を同一視して」して抗がん剤を繰り返し受けるよりも結果として長く生きる可能性が高い、ということはもう、ほとんど疑いの余地がないことなのではないだろうか。一回目の抗がん剤が強力なプラセボとして効くかもしれない、ということは否定できないにしても、おそらく二回、三回と繰り返していくと、プラセボによる+よりも副作用によるマイナスのほうが大きくなってくるのだろう。

最近読んだ『野戦病院でヒトラーに何があったのか』(ベルンハルト・ホルストマン著)という本で、ヒトラーを催眠療法でヒステリー性の失明から救ったという医師の話が出てくる。当時、催眠術はジークムント・フロイトやミルトン・エリクソンをはじめとする精神分析医が実践していた。最近では、その催眠療法を過敏性腸症候群(IBS)の治療に使っているケースがあるそうだ。IBSの原因のひとつが開腹手術であるという。であれば、非侵襲的な催眠療法はまったく理にかなっている。催眠療法はまた、ヴァーチャルリアリティの技術を使って熱傷患者の痛みを和らげる際に、その効果を持続させるための暗示にも使われている。著者は「VRは医学界の態度に変化を起こすほど強力なものになるかもしれない」しているが、それだけで毎年15,000人(ヘロインとコカインを合わせた死亡数より多い)も犠牲になっている処方箋の過剰摂取に歯止めがかかることになろう。もっとも、製薬会社は薬がいらなくなる技術の臨床実験にはビタ一文払わないだろうが。

ストレスは免疫反応を抑えたり、老化を早めたり、人体にときに致死的な影響を与えるということが最近わかってきているが「子ども時代の環境はその後の人生におけるストレスへの感受性に影響を及ぼす」という本書の指摘はあまり知られていないのではないか。しかも「どんなふうに年老いていくのかは人生の初期に決まる」というのだから聞き捨てならない。ストレスは脳の配線を物理的に変えてしまうので、慢性的にストレスにさらされていると脳の報酬回路にも悪影響を与え、否定的な思考パターンが定着してしまうという。慢性的にストレスにさらされている人たちは、そうでない人にとっては何でもないことでも大きなストレスになる。子ども時代に逆境にさらされると脳がストレスに敏感になるだけでなく、エピジェネテイクスによって幼少期のトラウマが生理機能に組み込まれてのちに慢性疾患を引き起こす可能性を高くするという。社会的格差によってストレス耐性の格差もあるとすれば、ただでさえよりストレスフルな状態で生きている人たちには経済的支援以上のものが必要となってくるだろう。本書によれば外因的な問題(からくるストレス)は、通常人の体に直接的には害を及ぼさないという。本書によれば、人に害を及ぼすのはストレスフルな境遇への心理的反応であり、幸いにしてそれは人が制御できるものだ。受け止め方を変えるだけで、ストレスの多きな出来事から健康を守り、追い詰められた状況でもより能力を発揮できるという。その指摘から、ナチス収容所から帰還した心理学者、フランクルが書いた『夜と霧』を思い出した。フランクルはマインドフルネスのはしりかもしれない。

孤独(感)が健康に与える影響についての章で、何年か前に読んだ『孤独の科学』(ジョン・カシオポ著)も引用されていた。「誰かと一緒にいても、相手から気遣われていないと思えば、孤独を感じる。それは独りでいるのとおなじくらい危険」という話を読み、ここでもSNSなどのテクノロジーの出番があるのではないかと思った。義理の「いいね!」にもプラセボ効果くらいはあるのか。孤独が与える影響は、触れ合う人の数ではなく、孤立感の大きさによって決まるということもわかっている。「親しい友人がひとりかふたりだけでも、支えがあると感じれば、健康への影響を心配する必要はない」ということなので、むしろSNSなどやらずに。生身の友だちと丁寧に付き合った方がいいのか。そんなことを考えた。

心理状態を変えれば生理学的な変化がおこる、ということをさまざまな側面から書いてきた本書の最終章は「ルルドの奇跡」を扱っている。信仰心には生理学的影響があるようだが、心には奇跡的な治癒を起こす力はない、というのがここでの結論だけれども、「奇跡とは解釈なんです」「(ルルド)とは別の社会のモデルなのです」という、ルルド医療局局長のアレッサンドロ・デ・フランシスシスの言葉がこれからの科学との付き合い方、医療のありかたについて深い示唆を与えている。心は身体を変容させる力があることは、本書で紹介されたさまざまな研究によってすでに科学的に証明されているといってもいいが、これから必要なのはそれをふまえたうえで、身体を要素還元することによって発達してきたこれまでの医療の成果と、心からの治癒へのアプローチをどう融合していくか、ということだと思う。まず教育から、ではないだろうか。心に治癒力があるというということをその基本的なメカニズムとともにすべての人が学ぶべきだ。それが、信頼性の低い代替医療の蔓延をふせぐことにもなり、一方で人にとって有益なプラセボ効果ですら医療として認めないという狭量でドグマチックな医師や、人をとにかく薬漬けにすることに熱心な製薬会社の手から私たちの身体に対する主導権を取り戻すことにもなる。そして、ベンチャーの可能性。心の治癒力を高めるための偽薬やVRなどの分野は、シリコンバレーで流行のマインドフルネス瞑想よりもさらに市場として大きく、従来の医療とも馴染がよいのではないだろうか。「(科学的)根拠にもとづいた方法」で心と身体を調和させて生きていくためのさまざまな「入口」を見せてくれる、希望の書である。
「病は気から」を科学するAmazon書評・レビュー:「病は気から」を科学するより
4062179377
No.4:
(5pt)

心と体の両方向から症状は改善できる

「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙の書評が言うとおりである。

病気のとき、どんな薬でも、薬に代わる心理的治療でも、新薬のプラセボであっても、
とにかく「患者の症状が良くなる」のであれば、単純に言って、それは医療となる。

本書の結論でもある。

内容を要約する。

体は、心と密接に複雑に結びついて影響し合っている。ひとつの体から心だけを切り離すことはできない。
心に強いストレスを持つ人は、体にも心臓疾患として現れ、それが死因となり、著しく短命となる。
薬の効果を科学的に評価するときでさえ、心の効果が混じり込み、薬の効果と完全に分離することはできない。

心は文化的背景にも基づいている。そのため、薬の効果における「心の影響度合い」は文化や国民により異なる。
同じ薬であっても、その効果の度合いは、デンマーク人とブラジル人で違う。
外国で効果が実証された薬が、日本国でも同様な臨床試験が繰り返される理由である。

「病は気から」というのも、確かである。
しかし、気とか心というものは、すべての人の病気に効く万能薬とはならない。
個人差もあるが、気持ちだけで病はなおせない。
社会的「つながり」を持つ人は、持たない人に比べ、健康で寿命が長い。
社会的「つながり」も健康長寿のカギとなる、という一例である。

体の外見はどんなに違っていても、誰もが心の底では「幸せになりたい」と思っている。
「幸せになりたい」という気の持ち方が病をいやし、予防する。
このことは、全世界の人々に共通している。
「病は気から」を科学するAmazon書評・レビュー:「病は気から」を科学するより
4062179377
No.3:
(5pt)

タイトルと装丁で損をしているが、「買い」の一冊。

数冊分のエッセンスが入っているので、迷わず「買い」の一冊です。
タイトルだけを見ると「精神的なものが身体にどのように影響するか」という程度の本のように感じられます。
しかし、プラセボ効果は本書のほんの一部。
「疲労の原因が脳にある」「体の痛みを感じる原因」「催眠の効果」「マインドフルネス瞑想の効果」「幼児期の環境とその後の人生の関連」など、数冊分の内容が入っています。
3240円は決して高くない。
タイトルと装丁のために、売れるべき本が残念になっているケースの典型。
出版社は反省すべきでしょう。
「病は気から」を科学するAmazon書評・レビュー:「病は気から」を科学するより
4062179377
No.2:
(5pt)

根拠のない話の積み重ねではありません

実証されまくりのデータが羅列されまくりなゴリゴリした本ではありませんが
根拠のない話が積み重ねられて出来ている本ではありません。
また「私のばあい」は初めて知るような話しが多く、新鮮でした。
「病は気から」を科学するAmazon書評・レビュー:「病は気から」を科学するより
4062179377
No.1:
(2pt)

著者の真面目さは伝わってくる。

一生懸命勉強してるのはわかるんだけれど、いかんせんどこかで聞いた根拠が確かではない話の積み重ね。面白い本ではない。
「病は気から」を科学するAmazon書評・レビュー:「病は気から」を科学するより
4062179377

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