無垢なる町

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種別
長編
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あらすじ

2026年04月21日 無垢なる町 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

バージニア南部で起きた殺人の容疑者に浮上した女。だが、なぜか女への捜査は打ち切られる。保安官補ウィルは独自に捜査をするが。(「BOOK」データベースより)

評判

無垢なる町の評価:

8.00/10点 レビュー 1件。 B ランク

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平均点8.00pt

無垢なる町の総合評価:

8.00/10点 レビュー 2件。

感想一覧

サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

全1件 1〜1 1/1ページ
No.1
(8pt)

誰も幸せには生きていない、ディープ・サウスの町の悲劇

デビュー作でありながら、2024年度のMWA賞最優秀新人賞を受賞した作品。バージニア州の忘れられた田舎町で起きた殺人・放火事件を巡るドロドロの人間関係を描いたノワール警察小説である。
バージニア州の大都会リッチモンドから10年ぶりに故郷に戻り保安官補になったウィルは火災現場に遭遇し、焼け跡から旧友のトムの焼死体を発見した。その場で、現場から逃げようとした古い知り合いのジークを逮捕した。しかし、解剖によりトムが刺殺された後で証拠隠滅のために放火されたことが判明し、旧知のジークの仕業とは考えられなかったのだが、ミルズ保安官はジーク犯人説を譲らなかった。ジークの妻ばかりかトムの母親もジークの犯行を信じず、私立探偵のベニコに調査を依頼した。ジークを信じるウィルも保安官に逆らい、ベニコと共に独自の捜査を進めることにした…。
近代化が進むバージニア州で見捨てられたような町に住む人々は、町を覆う閉塞感に苛まれ息苦しい人生を送っていて、その矛盾や葛藤が事件として噴出したのである。この設定、舞台装置は南部ノワールの基本型で目新しくはないが、主役を勤めるウィルとベニコの設定が上手い。二人は互いに話したくない過去を引きずり、重苦しく、出口がないような町でドロドロの人間関係を悩み、傷つき、それでも何とか正義感を持ち続けようとする。暴力の力とそれでは解決されない人の苦悩が、本書の読みどころである。
ノワール、警察小説のファンにオススメする。

iisan
927253Y1

Amazonレビュー

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.1
(4pt)

この世の美しさは豊かさの中にだけあるわけではない

バージニア州。州都リッチモンドから故郷の田舎町(ユーフォリア郡)に戻ってきた主人公、保安官補のウィル・シームズ。彼は焼け落ちた家の中から死体を発見するわけですが、その死体は彼の旧友でもあるトム・ジャンダーズでした。トムは刺殺されていて、何者かがそのことを隠蔽すべく放火したと判断されます。ウィルは上司のミルズ保安官と共に捜査にあたります。そして、容疑者を見つけ出しますが、それはウィルの昔からの知り合いであるジーク・ハソムでした。ウィルはジークが人を殺すはずがないと主張しますが受け入れられず、ミルズはジークを逮捕することになります。
 一方、その逮捕に納得できないトムの母親とジークの妻は黒人女性である私立探偵のベニコ・ワッツを雇い調査が開始されます。ウィルは、上司の意向を無視してそのベニコと共闘することになるわけですが・・・果たして。
 終始、登場人物たちの重苦しいダイアローグで語られていくバージニアの物語は、ミステリ的には<Who-Done-It>の体裁が取られていますが、そしてそれはそれなりに興味深いプロセスを辿ることになるわけですが、どちらかと言えばミステリというよりも米国南部、バージニアの南北戦争の頃から変わらない歴史と風土の裏側を描写しているように思えます。中盤、或る奇抜なアクションによって捜査が反転することになりますが、その手段は法を超えたところにあってかなり大胆なストーリー・テリングだと感じられます。それもまたこの作者の資質に根ざしているのかもしれません。その点、ヘンリー・ワイズはミステリ的なロジックにそれほど興味があるようには思えませんでした。
 そこには貧困が根付き、居場所を見失った多くの登場人物たちの罪悪感が継承されながら蠢いています。貧困によって、或いはその土地柄によって、ドラッグ、酒、性、暴力への依存へと逃げ出す登場人物たちの生き様が渾然一体となってその希望の無さ、弱さを象徴しています。
 最も興味深い登場人物は、実は主人公のウィルではなく、典型的なドラッグ依存症者でもあるサムの存在にあって、最も希望を見出すことができない登場人物の中にささやかな希望であり、心の良きものを見出すことが出来るというパラドックスが成立しています。
 1990年代前半、私はバージニアからウエスト・バージニアまでのドライブを敢行したことがありましたが、田舎町の裏寂れた光景の中で点在する廃屋の貧しさを思いながらも何故かその光景が原初の光景のように神々しく感じられたことを思い出しました。この世の美しさは豊かさの中にだけあるわけではありません。
 ▫️「無垢なる町 "Holy City"」(ヘンリー・ワイズ 早川書房) 2026/4/24。
無垢なる町 (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: 無垢なる町 (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
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