紅き虚空の下で
- オカルト (136)
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この本に収録されているのは全4編。だが、前半2つと後半2つの話は色が全く違う。 まず前半2つ。表題作「紅き虚空の下で」と「蛙男島の蜥蜴女」はラノベ調の文体で書かれたとんでもミステリー(バカミスの方が通りがいいか)。 「紅き~」では殺されるのは人間の少女だが、その真相を調査するのは人間ではなくメタルフィッシュ(UMAのスカイフィッシュがモデル)という生物。 僕とリサのメタルフィッシュ夫妻(離婚済み)が、殺人犯だと疑われた息子セレカの抹殺を阻止するために王立警察のグレアムと手を組み、人々の夢の中を飛び回り事件を解明していくというストーリー。 タイトルにある「紅き虚空」とはトップクラスの真空刃(カマイタチ)使いであるリサの尊称《紅き虚空の疾風(はやて)使い》から来ている。 ワードを打ってるだけで中二マインドが昂ぶってきます。これ。 「蛙男~」は新婚旅行で蛙島にやってきたぼくと妻のひかりは、島の支配者である《蜥蜴女》への生贄として捕らえられてしまう。しかし、《蜥蜴女》は儀式のための密室で殺されてしまう。 殺したのは《下級の蛙男》か《将軍》か《呪医》か《妖術使い》か、はたまた……!? 生き延びるため、そして新たなる支配者になることを求めて犯人探しが始まった。 上記を読んでええ~って思ったでしょう。読書中・読後もやはりええ~って思うはずです。 トリックに懲りすぎた本格ミステリーやバカミスってのは大概そういうもんなんです。 ラノベ好きでミステリーに興味があるという方は読んでみてはいかがでしょうか。 ラノベでぶっ飛び設定に慣れている方は、意外とすんなりはまるのではなんて思ったり。 ここから後半。ダークサイドが幕を開ける。 野良犬みたいに、人里離れた山奥に捨てられた。 という書き出しで始まる「兵隊カラス」。山奥に遺棄された僕は老人「兵隊さん」に拾われ、そこで不気味な物事の数々を目撃し体験する。 描写の異様さにスーパーナチュラルなホラーを思わせるが、意外にも本作が一番読者が納得しやすいであろうミステリー的な収束を見せる。 話におどけは一切無し。一つ前の「蛙男~」の主人公が地の文でもラノベ調におどけるせいで、悲壮感が漂わなかったのに対して落差がすごい。 そして最後「落頭民」。 一言で言えば、文字通り頭のおかしい話。 自分の首を鎌で刈り頭を飛ばす種族、落頭民の娘であるわたしと、里に迷い込んできた蛇遣いの男ユキオの歪な歪な恋物語。 というのが物語の中心であると思われるが、最初の一文から最後の一文まで悪夢的なイメージの連続で話が繰り広げられていき、話の筋などというのはあまり意味を持たない(と思う)。 本作は岡本綺堂の『中国怪奇小説集』を原典としているが、そちらを読んでいない自分には夏目漱石の「夢十夜」が思い起こされた。 夢野久作の『ドグラ・マグラ』は「本書を読破した者は、必ず一度は精神に異常を来たす」と評される書物であるが、すっと読み進められる容易な言葉で延々と禍々しい情景を想像させられる本作こそが、その評には相応しいように思える。 こうして4作書き出して改めて思うのだが、前半の二つと後半の二つは別の本にできなかったのだろうか。バカミス小説集かホラー小説集として出した方が購買客も絞りやすいと思うのだが。 ただ前半2つは作者の単行本デビューのはるか前に、別名義で発表した最初期の作品。「落頭民」も同じくデビュー前である「角川ホラー大賞短編賞」最終候補作なので、デビュー前の3作品+書き下ろし1作と考えれば納得もいくか。 ここに収められている4作品には、どれも「夫婦」と言うものが関係しているのだが、作者は何か思うところがあるのだろうか。それともただ単に書きやすいのか。 さて、長々と書いてきたが本作は読んでて楽しい本だった(特に後半)。作者は時代小説(自分としては苦手な、敬遠するジャンルである)が本業の人らしいのだが、他の作品も読んでみたいと思った。 | ||||
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この作品には驚かされた。今まで読んだ高橋由太作品とは全く違う。 高橋由太という作家は2-3年前から文庫コーナーでやたらとみかけるようになったが、そのほとんどがファンタジー時代劇の書下ろし文庫で濫造というレベルのスピードでどんどん新作を出している。その舞台となる土地・時代の背景描写に深みはなく、例えば江戸時代を舞台としていても江戸情緒の描写は他の時代小説と比して著しく浅い。ストーリーも荒唐無稽なだけでなく割合に雑な展開である。とはいうものの、逆にそれだけにマンガ雑誌を読むように読み飛ばすのには最適で、一度買い出すとついついヒマつぶしで次々買ってしまい、とうとうこの人が現在まで出した文庫本はほとんど(というか多分全部)購入した。 この一冊もその流れで購入したのだが、ここに収録された4編のうち書き下ろしの1編を除く3編は、高橋由太名義でファンタジー時代劇作家としてデビューする以前に公にされた作品を集めたものとのことである。書き下ろしの1編を除く3編は架空の存在を容認する世界観での作品だが、ファンタジー的というより幻想小説の趣きが強く、特にこの本最後に収録されている『落頭民』は耽美的エログロともいうべき作品で、個人的には丸尾末広漫画の世界を彷彿とさせると思った。いや、より洗練を獲得すれば澁澤龍彦の世界に近付くのかもしれない。また、唯一の新作『兵隊カラス』に充満する血の匂い、暗然たる結末、いずれも負の力強さに満ちている。 巻末の解説者は無理やり他の高橋作品と関連付けようとしているが、バカバカしくて失笑した。他の作品群とは全く異なる暗い情念の深さに圧倒されるべき一冊なのに。 読後感は爽やかさとはかけ離れたものであるが、この作家のこういう作品がもっと読みたいと強く心を動かされた一冊だ。 | ||||
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