ぼくに与えられた使命、それは勝利のためにエースに尽くすこと―。

東京から青森まで―緑まぶしい五月の国道四号線を完全装備の自転車でツーリングする中年グラフィク・デザイナー、桐沢風太郎。

あれから三年―。白石誓は、たった一人の日本人選手として、ツール・ド・フランスの舞台に立っていた。

軍靴の音が忍び寄る昭和9年。かすかな地響きをあげ、数多の自転車が中山道を疾走する。

死ぬ覚悟も、誰かを傷つける恐怖も呑み込んで、走る。ひたすらに自分と向き合うために。

他人の勝利のために犠牲になる喜びも、常に追われる勝者の絶望も、きっと誰にも理解できない。

石田真二の職場は熊姫山スポーツ公園管理事務所。

一週間の沖縄合宿から帰ってきた純一。

十二月三十日、GI優勝者や賞金王など九人の選手が賞金一億円をかけて頂点を争う「KEIRINグランプリ」が開催される。

東京湾に浮かぶ月島。ぼくらは今日も自転車で、風よりも早くこの街を駆け抜ける。