天才望遠鏡
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あらすじ
「才能を持った人間なんて、実はたくさんいる。でも、天才は違う。天才は、才能を見つけた連中が、一方的にそう名づけるんだ」デビュー10年。爆発的に売れることはないけれど、きちんと締め切りを守り、編集者に無理難題を押し付けずに着実に仕事をこなす作家・星原イチタカ。一方、同期デビューの釘宮志津馬は偏屈で横暴であることを自覚しながらも、大人気作家であることから周囲に丁重に扱われることに対し憤りを感じている。イチタカの才能を軽んじる向きもある中、釘宮だけが彼の「天才」性を”観測”していた。藤井聡太七冠の記録を塗り替え、史上最年少でプロ入りした中学生棋士、タピオカミルクティーの味もマカロンの味も知らない、かつての「氷上の妖精」、気がつかぬままに抜群の歌声を持ち、オーディションを駆け上がる天才中学生……。描かれるのは5人の天才たち。彼らと、彼らを観測し続けた人々の姿が紡がれる連作短編集。星の盤側妖精の引き際エスペランサの子供たちカケルの蹄音星原の観測者(「BOOK」データベースより)
評判
天才望遠鏡の評価:
0.00/10点 レビュー 0件。 C ランク
天才望遠鏡の総合評価:
9.20/10点 レビュー 5件。
感想一覧
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Amazonレビュー
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将棋、フィギュアスケート、歌、名馬、作家とそれぞれの分野の天才たち。
それぞれに苦悩や壁があるのだが、世間はそれに気付かない。
自分には能力がない、家庭環境の問題だから仕方ないとほどほどに諦めながら生きる大人はたくさんいるが、天才に対しては、夢を見せてくれ、遊んでないで練習しろ、人生経験を積めとか、好き勝手なことを言う。
最近では親ガチャという言葉もあるが、自分が恵まれているかどうかは誰かと比較しないと分からない。
「この親の子供に生まれてよかったなんて思わなくていいから、せめて、自分は親選びのくじ引きに失敗したなんて思わないで大人になってほしい」
という言葉はなんとなく心に残っている。
本書に出てくる人物の中で、スポーツカメラマンの多々良、エスペランサ(無料学習塾)の講師をしているナナオ、売れっ子作家の釘宮が特に好きだった。
多々良の一瞬を切り取るプロ意識やアスリートへの気遣いがよかった。
「写真を撮る行為をスポーツに例えるなら、陸上の跳躍競技に似ている。飛び越える対象を睨みつけ、体の節々に準備はいいかと問いかけ、助走し、踏み切って、飛ぶ。撮影時間が何時間あろうと、「ここだ」という瞬間は短い。走高跳や棒高跳の選手がバーを越える一瞬、走幅跳の選手が砂上を飛ぶ一瞬、本当にそれくらいの時間だ」
ナナオは広告代理店に勤めながらも、エスペランサでボランティア講師をしている。エスペランサに通う子供たちの可能性を潰さないように、何かしら将来の選択肢が増えるよう、子供たちのために一生懸命なところが好きだった。
「エスペランサに通う子供たちの多くは、生まれたときから親によって可能性を握り潰されている。塾も習い事もできず、学校の部活ですら入れない。家で当たり前に弟や妹、ときには両親や祖父母の世話をする。「努力次第で未来が開けるよ」なんて言葉がどれだけ浅はかなものか、言えてしまう人間にはわからない。無料塾はそんな社会の受け皿だけれど、それは応急処置のようなものだ」
釘宮は、性格に難があって社会性がない売れっ子作家だが、同い年で突然死した小説家の星原イチタカを忍ぶ場面でも、その性格の悪さがこれでもかというくらい描かれており、そんな中でも星原に対する敬意や感謝の念が感じ取れた。
「小説家の世界でも、人対人の仕事だから社会性が必要、性格を直せと言われ続けてきたが、星原だけは悪いと思っていなくてもとりあえず謝ってみろ、と言ってくれたり、俺に説教をしてくれた。それがきっかけで少しずつ原稿の依頼が来るようになった。アイツは大ヒットも出さないが大赤字も出さない、人当たりがよくて〆切も破らない出版社に都合よく使われる作家。そんな自分の置かれた状況を受け入れて、そこそこ楽しんで、やり甲斐も感じて、小説家でいるのを楽しんでいた」
最終章では、ほかの短編で描かれた人物のその後も少しずつ描かれていて、皆が自分なりの一歩を踏み出していたのもよかった。