幽霊と探偵
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 | 2022年06月24日 幽霊と探偵 (メディアワークス文庫) TVドラマ化もした『探偵・日暮旅人』著者が贈る幽霊×探偵の謎解き事件簿 元刑事の探偵・巻矢健太郎には、幽霊の相棒・月島人香がいる。人香は巻矢の元同僚で、失踪時の記憶を失くして巻矢の前に現れた。以来、悩みを抱える依頼人に取り憑き、事務所に連れてくるようになる。 部屋から忽然と姿を消した歩けないはずの父を捜す男性。神社に現れる少女の幽霊に会いたがる女子大生。人香が持ち込むやっかいな問題を片付けながら、巻矢は人香失踪の真相を探るのだが……!? 『探偵・日暮旅人』シリーズ著者が贈る、心優しき幽霊と苦労性の探偵の、心温まる謎解きミステリ!(「BOOK」データベースより) |
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| 随分と久しぶりの山口幸三郎作品。「日暮旅人」シリーズに大いにハマった読者の一人としては縁遠くなった事に一抹の寂しさを感じながら拝読。 ４篇の短編から構成される連作短編形式。基本的には危急の問題を抱えた人物の前に姿を現す幽霊・月島人香とそんな幽霊に取り憑かれている元刑事の私立探偵・巻矢健太郎のコンビが市井の人々が巻き込まれた奇妙な事件の解決に乗り出すというのが基本的な構成。 端的に言えば超圧縮版の「日暮旅人」シリーズを読んでしまった様な気分になれる一冊。作者の出世作であり後にドラマ化もされた作品の良い部分も引き継いでいるのだけど、一冊通して読むと「出版業界、そんなに余裕が無いんだ……」と暗澹たる気分になる。 １～３話に関してはある意味「白旅人」に近い。「日暮旅人」シリーズの序盤って本作と同じ連作短編形式だったのだけど、そこで軸になっていたのは探偵役の旅人じゃなくて、各話のゲストキャラの方だったかと。旅人がその不思議な目で市井に生きる人々の人生と関わり合いになる穏やかな雰囲気の印象の話が多かった様に思われる。 本作も身体が不自由になった父親の失踪に振り回される息子であったり、幽霊と出会う事に憧れる女子大生だったり、人助けをした事がバレると困る不器用な中学生であったりと多彩な背景を背負ったゲストキャラと彼らが巻き込まれた、あるいは引き起こしてしまったちょっとした事件の謎を幽霊と探偵という奇妙なコンビが明かす展開で「うんうん、山口幸三郎は良い話を書くじゃないか」と変わらない良さに頷かされる。 主人公を狂言回しのポジションに置いて話を組み立てる巧さは失われていないのである。 ところがこの巻の最終章となる第４話、これは全くの別物。幽霊として巻矢に取り憑いている人香を軸とした話であり、舞台となる市の政治であったり、アンダーグラウンドな組織が絡み３話までとはまったく様相が異なる話になっているので面食らう人も多いんじゃなかろうかと。 「日暮旅人」シリーズも上で語った序盤の市井の人生に主人公が関わる連作短編から主人公の素性に関わる市長や反社会的勢力の絡む物語へと様相を変えるシリーズなんだけど、第一巻から変化したわけでは無い。第一巻ではヒューマニスティックな性格の人物と思われる旅人にも妙に酷薄な部分があるのだと示す程度に留めていたかと。 その後「日暮旅人」シリーズは巻を重ねる中で旅人が幼い頃に巻き込まれた事件や、相方である雪路も絡んだ市政の暗い部分が明かされて徐々に巨悪の絡むスケールの大きな話になっていたと記憶している。重要なのは徐々に不穏な雰囲気を匂わせ、一般小市民が軸になる話から切り替えていったという部分にある。 こういったじっくりとシリーズを煮込んでいく様な展開であれば読者も変化について行けるし、その変化自体を楽しむ余裕を持てると思う。また作者である山口幸三郎の良さも出す余裕みたいな物が感じられたと思う。 が、本作は第一巻を構成する１～３話と４話が全然別の作品じゃないかと思わせる程の性急さばかりが感じられる。幽霊となった人香の謎を解こうと巻矢が調査と推理を展開し、警察や反社会的勢力が絡むストーリーを否定する訳じゃ無いが劇中に登場する巻矢の従妹である女刑事の乱入も含めて話全体が唐突感と未消化感で溢れ返ってしまっている。こんな唐突なエピソードを入れるぐらいなら市井の人を軸にした話だけで構成した方が良かったんじゃなかろうか？ 意地悪な言い方になるけど、ひどく展開を焦った様にしか感じられない。人香の背負った背景にしても生前の人香に仄かな思いを抱いていた女刑事にしても２巻目以降で出せばいい物を無理やり第一巻で出して強引に話を広げた様にしか思えなかった。 悪口ばかり並べてしまうのだけど読者の一人としては余裕の無さしか感じられない。たしかに「日暮旅人」シリーズの第一巻が刊行された12年前と比べても出版業界は余裕を失い、ゆっくりとした展開を読者に提示できない状況に陥っているのは分かる。でも急いては事を仕損じるという言葉もある様に急すぎる物語展開は読者を置いてきぼりにしかねない。 穏やかな「いい話」から始めて徐々に物語世界の暗い部分に話を引き込んでいく様なシリーズ展開はもう許されないのかと思うとちょっと寂しい気分になる……そんな一冊。 | ||||
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| 最近、霊体とコンビのラノベをちらほら見かけますが、この系統が流行っているのでしょうか。 一話目は一見ライトミステリに見えますが、介護保険がある現在、話にかなり無理があります。 残り4話は、霊体の人香のプロフィール絡みの話です。 探偵の巻矢は人香を死者の幽霊と決めつけていますが、人香に死んだときの記憶はなく、地の文ではあくまで行方不明者となっているので本当のところはどうなのだろうと思って読んでいたのですがはっきりしませんでした。 人香の父親の話は犯罪絡みとしては中途半端で、もっとぶっ飛んだ陰謀話の方がエンタメとして楽しめたのではないかと思いました。 1話だけ登場の脇キャラの方が面白くてユニークなタイプが多かったです。 あと、要介護者を障碍者と呼ぶのはどうかと思います。 | ||||
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