浴槽で発見された日記
評判
浴槽で発見された日記の評価:
3.83/5点 レビュー 6件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1〜4 1/1ページ
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浴槽で発見された日記の評価:
3.83/5点 レビュー 6件。 C ランク
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村手義治 訳)』と『浴槽で発見された日記(集英社 1980年刊・深見弾 訳)』が存在している。
国書刊行会から「スタニスワフ・レム コレクション 全6巻」が刊行されたが、なぜ本作がコレクションから
外れてしまったのか、多くの人が疑問を抱いていることだろう。
私もそのひとりで、レムの文学を語る際には外すことが出来ない水準にある作品である本作を、2018年現在
においても「絶版状態」という極めて信じ難い状況は、「それ」が「そのまま」本作のテーマに近似した状況
であるという、まるで「冗談」のような事態になっていと思う。
これだけ絶版期間が長いので、「ネタバレ」を含んだことを書かせてもらうことにするが、内容を簡単に書く
と、地球上の「パピル(紙)」が「天王星」から持ち込んでしまった「細菌」によって突然分解消失されて
しまったという設定で始まり、幸いにも主人公が書いた「手記(日記)」だけはなんとかペンタゴンの浴槽の
中で分解されずに残って発見されたということかから始まる。
主人公は様々な命令を受けて、色々な部署の色々な人に会うが、その主人公もけっきょくは「タライ回し」の
ような状態が延々と続いていき、混乱の中で手記は途切れる・・・という内容なのだが、これは多くの人から
カフカの『城』という小説と似ているという指摘があるとおり、まさに「レム版・城」という認識で間違いない。
ならば、本作を「読む必要はない」と判断する向きもあるだろうけれども、そこはあの「巨人・スタニスワフ
・レム」であるから、そもそもカフカの『城』という作品を「前提」にして書いているという意図がちゃんと存在
しているわけで、むしろカフカの『城』を読んでから本書を読むほうがより本作の「面白さ」や「凄さ」が感じら
れるはずだ。
カフカの『城』は「未完の作」で、カフカの死後、カフカの友人であるマックス・ブロートという人がその題名
すら決定していない「未完の草稿」を編集して出版されたものだが、おそらくレムは『城』の小説として内容以上
にこうした作者ではなく、完成しておらず、第三者によって「編集」され、タイトルすら第三者が勝手につけた
という「作者」から切り離さられた一連の「経緯」に大きな興味をもち、カフカの『城』として出版されて多くの
読者に読まれて「解釈・理解」されているという現状を主題にするという、「反転」の手法を用いているように
思われる。
それ故に、本書は『城』とは違ってストーリー自体が「消失」してしまっているという「パラドックス」のような
「小説構造」になっていて、ようは「玉ねぎを剥く」ように「主題」すら存在しない「小説」という前代未聞の
小説作品になっていることに気が付いた時に、レムの仕掛けた「装置」としての本作が、いかに奥行きの深い作品
であるかということに気づく仕組みになっているのだ。
これはもう、哲学者・サルトルの『嘔吐』という有名な小説すら軽く飛び越えてしまっている。
完全にレムの「思想書」であるという「解釈」をしたほうがいいくらいの「読解力」を読者に要求する、難解な作品
だという「結論」に、私は勝手にたどり着いたのだが、それすら私の「一読者」としての解釈に過ぎない・・・。
是非とも復刊して欲しいし、書かれている「小説」の「字面」以上に込み入った「創作システム」の中で、読者には
大いに「驚愕」して欲しいものです。