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閉電路
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閉電路の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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エスピオナージもの、というにはちょっと違うと思う。 イギリス人が南米某国で植民地大帝国を築き、それがかつて迫害した人物が大統領になってしまって、その植民地貴族サマはたちどころに大ピンチ、それをどう本国イギリスで政治外交工作をして切り抜けるか、といった話は、以後のジョン・ル・カレやマイケル・バー・ゾウハーのように東西冷戦を舞台にしテーマにしていた作品群より明らかに一つ前の時代の世界地図の中での話である。 この作品は1960年に出版された。つまり「アフリカの年」、安保反対の年で、同じく早川ポケミスにある「レアンダの英雄」(アンドリュー・ガーヴ)が独立運動の闘士を脱出させる話だったように、この作品は欧州の植民地が永遠に失われる時代の物語で、それから還暦を隔てた未来に読んだので、むしろお伽噺のように感じられた。 植民地貴族の青年、その国のイギリス大使館員、イギリス外務省の外交官がそれぞれの思惑で動くのだが、前二者がそれぞれ、21世紀ではとうに絶滅したタイプの男性性を確信し、自らが世を支配していることを前提に世界が回っていると心得ている痛快な自信にみちており、それが傲慢でも不遜でもない、陽性な男っぷりになっているのが、へえ、人類はこのような精神構造も取れるのか、という驚きを以て眺めた。 だが、外交官がかかわる陰謀については、うまく作品の中で有機的に扱えていないので、切り捨ててても良かったように思う。 19世紀植民地帝国よりさらにその前のコンキスタドールの切り取り勝手の、今見れば野蛮な首狩り族の酋長のような欧州の植民地主義の野蛮さを紳士に仕立て直した時代の野獣性と紳士性の混合というか。 陽性な男性の、性と死を賭けた政治とデスゲームの中で発散される色気が馥郁と漂う。 反面、女性も黙って壁の花をしている訳ではなく、植民地貴族の隣りの領土を継承する女性は主人公に敢然と誘惑にかかり「育ちの良い、でも現場を分ってないカンドロ人と結婚しろと?それよりは貴方と一緒になった方がいいわ。これはビジネスなのよ」とカエサルの前で絨毯から転がり出てきたクレオパトラよろしく色と欲と愛の入り混じった対等の交渉をくりひろげ、やはりイギリスは外交大国、国民のすみずみまで交渉技術は行きわたっているわ、と感嘆することしきり。 男も女も生を炸裂させる官能が漂っている。 その薫染に陶酔した。油脂で甘美で粘液質の芳香だった。 果たしてこの植民地貴族は無事に使命と領土をまっとうできるのか。 ラスト一行まで張りつめた緊張がみなぎる傑作だった。 内容よりも、かつて存在した世界の記録を読むような気分で読み終えた。 | ||||
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Closed Circuit(1960年) まさに巻を置く能わず! 粗筋は裏表紙の写真をご覧いただくとして、一族の危難を救うべく祖国イギリスを訪ねたメイスン青年と、彼らがイギリスに有する6万ポンドの資産をめぐって、外務省法律顧問ギッブ、在イギリスのカンドロ大使館員メンデレス、秘密諜報員アマデウス、メイスン青年の悪妻ラビニア、メイスン青年に思いを寄せるクレア、アマデウスを陰で操る黒幕と多彩な人物たちが繰り広げる絢爛たる権謀術数の応酬に、ページをめくる手が止まらない。 メイスン青年とメンデレスの奇妙な友情、自信過剰のギッブを操って犯罪行為に向かわせるラビニア、重度の狭心症を患いながらも地所の危機にカンドロから飛行機で駆け付け、孫にすべてを託して息絶えるあっぱれなメイスン老人。彼らを個性的に描き分け、暗殺者の襲撃が一度あるきりで アクションシーンはほぼないけれど、誇り、信義、友情、正義、欲望を賭けて善と悪とが火花を散らすストーリーはあたかも剣劇小説のよう。剣劇場面であるべきところが知能的な作戦行動場面に置き換わったものと思って読めば、本作の面白さを堪能できること請け合いです。 | ||||
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