代々木Love&Hateパーク
- 演劇部 (39)
※タグの編集はログイン後行えます
【この小説が収録されている参考書籍】 |
■報告関係 ※気になる点がありましたらお知らせください。 |
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点0.00pt |
代々木Love&Hateパークの総合評価:
■スポンサードリンク
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
現在レビューがありません
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
最近すっかり壁井ユカコさんにハマっている小生としては嬉しい文庫版の刊行 「ラブ&ピース」ならともかく「ラブ&ヘイト」とは何ぞやと疑問と期待を抱きつつ拝読 物語は三月最後の日曜日、東京は代々木公園の片隅に住みついているホームレス 鮫洲義郎が噴水池の畔で中学か高校の制服のごとき服装の少女から「この池に 飛び込んだら死ねるかな?」という奇妙な質問を受ける場面から始まる。少女に 内心で圧倒されながらも「ロープで首吊った方が確実だろう」と答える鮫洲 少女が姿を消した後、突如電波の入りが悪くなったラジオに悪態をつく鮫洲だったが 視界の片隅を過った桜の花びらの様な白いものを見て今年が「チェッコさん」が 現れる年だと気付く 同じ頃、原宿駅の表参道地区では若手俳優の蓮沼が共演の女優やスタッフの 「顔だけで棒演技の使えない大根役者」という誹りに耐えながらドラマの収録の 仕事をこなしていた。気だるい空気の漂う撮影現場だったが、大物女優の梅屋敷恭子が 現れた瞬間緊張感が走る。蓮沼と演技をしながら「一時間空けなさい」と命じる恭子 文字通り恭子に飼われている蓮沼は反発を見せながらも逆らえず、「お前など潰すのは 簡単」という恭子に何も言い返せない そのロケで混み合う代々木公園の原宿門前では「斬られ役」専門の俳優・不動忍が 殺陣の稽古を付ける約束をしていた高校の演劇部と待ち合わせをしていた。部員が 集まる中で一人だけ遅れてきた藤丘奈津美は周りと険悪な雰囲気になるが、奈津美と 援助交際の関係にある忍は庇い立てする羽目に。初っ端から荒れた雰囲気の稽古に 向かう途上忍が目にしたのは中年ロカビリーグループに混じって踊る妻の真栄子だった… 上に書いた語り手のいる場所も、語り手を取り巻く人物も全く異なる三つの話は 序盤の僅か30頁ほど。膨大な人物が入れ替わり立ち替わりで現れては交錯する ジェットコースターの様な目まぐるしいザッピング式の場面転換で語られる本作は 典型的な群像劇スタイルの作品。ホームレスから若手イケメン俳優、大物女優に 高校の演劇部、斬られ役専門の売れない俳優にその妻や子供、更にはコンビ解消を 巡って揉めるお笑い芸人のコンビまで加わって広大な代々木公園を舞台に所狭しと 終始ドタバタ劇を繰り広げている 話は互いに秘密にしていた代々木公園へのお出かけが発覚した忍と真栄子の夫婦が 「一体何をしているのか?」と相手の様子を探り初め、真栄子が忍が女子高生と 援助交際の関係にある事に気付き、ただでさえ夫の稼ぎの悪さに被害者意識を 山ほど貯め込んでいたフラストレーションに火が付き、殺害に至った事から一気に 話が動き始める。しかも死人は一人で留まらず、自殺者なんかも含めて次から次に 殺し・殺されの連鎖がまるで「パイ投げ」の様に続くのである。あまりに簡単に 人が死んだり、ヤケクソになって人を殺したりする姿は初期の筒井康隆の作品に 強い感銘を受けた人間としては妙に懐かしく感じられた。本来は陰惨な筈の殺人を スラップスティック調のドタバタ喜劇として昇華させる辺りはまさに筒井風 話の方は売れない俳優である忍と不満だらけの主婦・真栄子、二人の息子で動画 サイトに「踊って見た」動画を投稿する有名人「あざみΨ」の演技に惹かれて練習場の 代々木公園に現れた中二病まっただ中の少年・弓弦が中心となって動く事が多いが 互いに顔見知りの筈が、実は相手が知らない裏の顔を持つキャラクターが多い上に 作中のキーアイテムである「大仏のかぶり物」のお陰で実際に顔を隠したまま 登場人物が行動する場面も多いので、そのすれ違いで殺されたり、助かったりするので 中々スリリングである 更にこのパイ投げ的連鎖殺人に冒頭で登場した「チョッコさん」なる都市伝説が 絡んでくる。代々木公園の前身である代々木練兵場で上官に虐め殺された兵士の 怨念が絡んでいるとされる「知らないうちに仲間に加わって、周りの人間はまるで 前から仲間だったように扱うが、その代わり本来の仲間が一人消えている」という 「七人ミサキ」の様な怪現象が見え隠れして、誰が「チョッコさん」で消されるのが 誰になるのか、というスリリングさも加わり話に緊張感を持たせている スラップスティックと怪奇的要素だけなら壁井ユカコらしくないな、と思われる方も いらっしゃるかもしれないがご心配なく。しっかりと登場人物間の切なく、爽やかな 恋模様も描かれるので従来の壁井作品の恋愛要素が好きという方にも充分楽しんで 頂ける作りとなっている 終盤の「チョッコさん」の正体が明かされてからの展開や、その代わりに消える 人物の絡みが若干駆け足になったのが惜しい。「チョッコさん」を引き継ぐと記憶が 失われるという設定をもう少し早く出していればなあ、という印象を受けた スピーディーに場面転換が続く群像劇というスタイルが好きな方や、筒井康隆調の スラップスティック的な殺人喜劇が好物という方には是非ともお勧め。ヤケクソに なった人間の赤裸々で救いの無い愚行の果てに何が待つのか是非ご確認いただきたい | ||||
| ||||
|
その他、Amazon書評・レビューが 1件あります。
Amazon書評・レビューを見る
■スポンサードリンク
|
|