闇をひらく
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収録作品は7篇。いずれも昭和44年から45年に書かれた作品で、文中で三億円事件(昭和43年12月10日)が「最近の事件」の例として挙げられている。 収録順で前半の4作は、実際に起こった事件や実在の人物を題材にしており、佐野洋作品の中では例外的に“下世話”な内容である。 「第一話 ダービー八百長工作」は、実際に昭和44年に起こった日本ダービーでの「タカツバキ落馬事件」を扱っており、事件の経緯を記した新聞記事や、「タカツバキ落馬は中央競馬会の陰謀」だとする武智鉄二の文章など、作品のかなりの部分が既存の記事類から引用という大胆な作品。 報道された事実の裏側でこんな事件が・・・と思わせておいて、さらにドンデン返しを用意しているのはさすがだが、何とディック・フランシスの小説『興奮』のネタをばらすという掟破りなことまでやっている。 とても佐野洋の作品とは思えない。(笑) 「第二話 D夫人殺害計画」も凄い。 この「D夫人」とは、某国の大統領の「第二だか第三だかの夫人になった」「週刊誌に追いかけられ、派手な話題を撒いている」人物だと書かれており、あの実在の「D夫人」のことだとしか思えない。 しかも「殺害計画」の中身は、最近の雑誌なら自主規制がかかって掲載されないかもしれない手法なのだ。 「第三話 暗い華やかな塔」は、「20世紀イギリス政界最大のスキャンダル」と言われた「プロヒューモ事件」を題材にしつつ、意外な展開を見せる。 「第四話 買度しマルセル」は、昭和43年、京都国立近代美術館での「ロートレック展」最終日に、油彩画「マルセル」が盗難にあった事件をヒントに、これまた意外と言うか大胆不敵な展開に至る。 こうして前半でいかにも虚実皮膜の間の「闇をひらく」展開を見せつつ、「第五話 証人が消えて・・・」では、作者の分身である推理作家の「私」が巻き込まれた事件という体裁になる。 ここでも新聞記事の引用を思わせる文章が登場するのだが、何日付の何新聞と引用元が明記されていないので、作者の創作と思われる。 しかし前半を読んできた者は、ウッカリすると、これも実在の事件と勘違いしてしまう。 その辺りに作者の計算があるのだろう。 「第六話 大使“夫人”誘拐事件」は「推理小説代表作選集 推理小説年鑑 1971年版」収録作品。 その意味では、本書中では最も有名な作品。(この年の「推理小説年鑑」は、都筑道夫「小梅富士」、松本清張「奇妙な被告」、戸川昌子「黄色い吸血鬼」、笹沢左保「海からの招待状」、土屋隆夫「淫らな証人」など、高水準のラインナップだった) 奇妙な事件の背後の「闇をひらく」展開は同じだが、扱われている事件は架空のものだ。 「第七話 有名校売春事件」も、架空の事件の背後の「闇をひらく」展開。 前半の収録作品が、いずれも実在人物や実際の事件を扱った、いわば際物なので、巻末の解説では収録作品に一切触れていないのが、微笑ましい。 佐野洋の短編と言えば都会的で端正でフェアな知的遊戯、というイメージが崩れる作品集と言っても良いかもしれない。 | ||||
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