マヤ終末予言「夢見」の密室
評判
マヤ終末予言「夢見」の密室の評価:
3.33/5点 レビュー 3件。 D ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1〜2 1/1ページ
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マヤ終末予言「夢見」の密室の評価:
3.33/5点 レビュー 3件。 D ランク
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このようなことを想起したときに、この小説は我々が慣れ親しんだ探偵小説よりも、よほど当事者にとっての事の真相を伝えているとも思われる。そもそも、過去に起こった事実の真相などというものは、ありそうでいて、しっかりと捕まえようとするとスルリと手の内から逃げていってしまう蜃気楼のようなものでもある。現在というときは、常に過去となって過ぎ去り、生じた事象の変化と人の記憶にのみとどまる。同じ場にいても、その人自身の過去の経験などにより、その解釈は異なるのが通常だ。たった一つの新たな事実が付け加わっただけで、その現象の持つ意味合いが180℃変わることも珍しくはない。しかし、現実はやはり個人の夢とは異なる。そもそも夢自体が現実との関わりなしに生じはしない。つまり、真相などというものは、確かにそのもととなったことはあるのだが、所詮は人の解釈の網目を通ってのみ、現出するような類のものなのである。
この作品は、特に前半部分で、悠梨香がボロン・マイェルの家に、引き込まれていく過程の描き方が秀逸である。悠梨香が得たビジョンは、悠梨香にとっては確かに現実である。また、それを裏付けるかのようなマヤ時代の虐殺についての記述が、プロローグにある。スペイン人による虐殺があったのは間違いないだろうが、このような歴史的事実が果たして本当にあったのかどうかは、現在となっては確かめようもない。儀式の前に必ず供されるアグルアグディエンラというお酒の存在もさらに、謎を深めている。懐疑的な目で見れば、このお酒とマヤの写真や歴史的事実から得られた幻影とも解釈できるからだ。また、悠梨香が精神世界に興味を持っているとはいえ、基本的には感情的に安定した合理的精神の持ち主であることも読者の判断を迷わせる。それが、つい最近まで赤の他人であった複数の人物と共有されているとすれば、なおのことである。
当人たちにとっては、まごうことのない現実が、異なる視点をもったものからは、まったく異なる現実として捉えられる。それでいながら、現実に起こった事件は、厳然としてそこにあり、どの解釈もそれなりの合理性をもっている。現実世界の複層構造を実にみごとに、異質な内面世界をもつ複数の視点人物の目から、浮き彫りにしているという点で、他にあまり例をみない作品であるといえよう。