我、鉄路を拓かん
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うちの事務所は、東京都港区芝という地域にあります。 この芝地域内には、広大な旧薩摩藩邸があります。また自転車で10分ほどで新橋駅がありまして、去年2022年は鉄道開業150周年ということで始発駅の新橋も話題になってました。 鉄道の線路敷設にあたっては、用地買収にあたって旧薩摩藩邸の敷地がもろに被ってダダをこねたので海の上に線路を敷いたって話は予備知識として持っていたのですが、山手線の新駅 高輪ゲートウェイ を作るにあたってその遺跡の一部が発見されたんですね。 その話についての小説があるってんで、興味をもち手に取ったのが本書です。 物語は、ペリー来航のときにお台場を作った土木請負人の平野屋弥市がイギリスからやってきた技師のエドモンド・モレルと協力しての鉄道建設への悪戦苦闘を描いてます。 自分としては出てくる地名がほとんど近所なので、一技術者の話も楽しく読めましたが、万人にオススメできるかというともう少し、鉄道プロジェクトにあたってのマクロな視点(予算とか政治とか)の登場人物やエピソードもあったら更に面白かったかなという印象でした。 | ||||
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2015/12/4のしょこたんのファミリーヒストリーで最初に登場した平野弥十郎の話としては品川や神奈川のお台場の建設と札幌新道の建設の土木請負人がメインで鉄道の堤建設はわずかに触れられているにすぎなかったのですが、本書では弥十郎の鉄道への思いに焦点が当てられていて、興味深く読みました。 | ||||
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梶よう子の新作のレビューである。梶よう子は、私が今年初めてその作品を手に取った作家であり、その最初に手に取った作品は「広重ぶるう」(新潮社)であったが、歌川広重がいきいきと描かれていて、読み応えがあり、☆5つと評価してレビューを書いた。その後、新旧作を幾冊か購入したが、梶よう子は多作の作家であって、読書がなかなか追いつかないため、積読(つんどく)になってしまっている。この「我、鉄路を拓かん」は、私が手にとった、梶よう子の2作品目である。 話は幕末から始まる。物語の主人公は、平野屋弥市だ。彼は土木請負を業にしており、巻末の参考文献をみると、実在の人物がモデルのようだ。弥市は神奈川台場の建設を請け負ったが、その台場の設計を行った勝麟太郎と知り合う。その勝が、アメリカから帰朝した際、弥市に「蒸気で走る鉄の車」があることを話す。そして、幕末の政治がいよいよ混乱し、土木建設の仕事が細るなかで、弥市は、日の本のための普請をしたい、いずれ、勝から聞いた蒸気で走る車の鉄路を作りたいと思うようになる。 そして、明治維新。弥市は、維新前に薩州屋敷に出入りしていたため、新政府から、東京ー横浜間の鉄道敷設の工事を請け負うことになる。しかし、鉄道敷設は初めてのことで、なおかつ架橋や海上を通す堤もあり、技術的な困難がある。また、政府内にも、線路を敷設する地域の住民からも、強い反対の声がある。また、請負業者も多数参加しており、一枚岩ではない。こうした困難を乗り越えて、いよいよ完成も近づくかというときに、弥市は北海道の函館ー札幌間の新道を作るため、北海道へ行くことを命じられてしまう。 あらすじは、このようなところであろうか。作者は、弥市を中心に、丁寧に、鉄道工事に携わる人々の気持ちを描き、物語を進めている。しかし、私は、弥市ひとりを主人公として描くことで、この小説に幾つか物足りなさを感じてしまった。一つ目は、弥市が北海道に行ってしまうので、この日本最初の鉄道建設の物語が、最後まで描ききれていない(物語が尻すぼみになっている)ということである。また、二つ目は、政府内にも鉄道敷設に賛否両論があったようだが、こうした政治過程も読者にはとても興味深いのだが、間接的にしか描かれていない。私は、主人公を複数にすることで、多焦点的に物語を作れば、この二つの物足りなさは解消したように思うのである。 そして、物足りなさの三つ目は、工事の技術的な難しさが、うまく描けていないと思う。当時の土木技術がどういうもので、それにどうイノベーションが起きたのか。全く書かれていないわけではないのだが、あまりすっきりしないのである。 このような感想を抱いてしまったのは、やはり、昨年、東京の地下鉄建設を描いた、門井慶喜「地中の星」(新潮社)という優れた作品を読んでしまっているからである。だから、この作品は「標準点」としての☆3つと評価した。 なお、いまこのレビューを書いている時点で、東京ステーションギャラリーにおいて「鉄道と美術の150年」という展覧会が行われている(2023年1月9日まで)。この展覧会に、勝海舟が描いた「蒸気車運転絵」や、小林清親が高輪築堤を描いた版画「高輪牛町朧月景」という作品が出展されている。梶よう子の小説を読んだ後、この展覧会を訪れたら、とても興味深く感じることだろう。これは、私の書いた51番目のレビューである。2022年11月11日読了。 | ||||
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