パンダより恋が苦手な私たち
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最近では単行本刊行作品も増えてすっかり一般文芸の人というイメージが定着しつつある瀬那和章の新作。 物語は主人公の雑誌編集者・柴田一葉が新企画「SNSと連動した読者参加型の恋愛コラム」を任される場面から始まる。ファッション雑誌の編集者を目指して出版社に就職したまでは良かったが、入社式で社長がファッション雑誌の廃刊を宣言した結果女性向けカルチャー雑誌「リクラ」の編集部に配属されて元々やる気が今一つだった一葉にとって気のりのしない企画だったが、コラムを担当する人物が灰沢アリアと聞かされて仰天。 かつてモデルに憧れていた頃は雲の上の存在であり、ある時を境に表舞台から姿を消していたスーパーモデルのアリアの元に出向いた一葉だったが、アリアのマネージャーに連れて行かれた焼鳥屋で待っていたのは以前と変わらぬ美しさと「チェックだけしてやるからコラム自体はそっちで書け」と初対面の編集者に無茶ぶりしてくるとんでもない女性であった。今さらゴーストライターなんて探せないと難色を見せる一葉に対し「ならあんたが書け」というアリアの無茶ぶりで一葉自身がコラムを書く事に。 コラムの題材となる読者からの恋愛相談も決まったが、まるで書けずに困り果てた一葉にアリアのマネージャーから「社会行動学を専攻し、恋愛について研究している専門家がいる」と提案してきた事から一葉は藁をもつかむ思いで件の研究者に会いに行くが、研究室で待っていたのは動物の「求愛ビデオ」に齧りつく容姿端麗な奇人で…… うーん……典型的な「詰め込み過ぎ」。アレもコレもと作者的に書きたいネタが多かったのかもしれないが、それを取捨選択せずに一冊の小説にぶち込んだら見事なまでに「これは結局のところ何を読者に見せたかったの?」という焦点も軸もさっぱり定まらないひどく散漫な物が仕上がってしまったという印象。 構成の方は連作短編形式。主人公の一葉が担当する連載コラムで読者から寄せられた相談を受けるもさっぱり書けないまま容姿端麗だが動物の求愛行動にしか興味の無い変人学者・椎堂司の元を訪れては一方的に蘊蓄を語られますます困惑、そこへ一葉を取り巻く人物の恋愛騒動が絡んできて……というのが基本パターン。 上に書いた冒頭部分とこの基本パターンの概略だけでもお分かりいただけるかと思うが、とにかくこの作品様々な要素が取っ散らかっている。連作短編形式として各章のゲストキャラの人生模様を読者に垣間見せる、というタイプの作品はよく見かけるし、その一方で主人公が仕事と恋に振り回されるという作品も多い。だが、この作品その両方を同時に追ってしまっている。これがまず「虻蜂取らず」になった原因。 一葉自身の同棲相手との破局、先輩編集者の近くにありながら手の届かないまま終わった恋、一葉の姉が諦めかけた歳の差婚、懇意にしているスタジオの紅一点として生きる女性カメラマンの生き様……こうして並べると各章のゲストキャラの抱えた事情はそれぞれに面白そうであるし膨らませるだけのポテンシャルもある。 だが、一葉のコラム制作とこのゲストキャラの人間模様と野生動物ネタがどうにも嚙み合わせが宜しくないというか、強引に三つのネタを掛け合わせようとしている様に見えてしまった。一葉のコラムの元になる読者の相談に近い恋の難局が一葉のすぐ傍で発生するというだけでもちょっと強引なのだが、その拗れた人間模様が野生動物ネタで解決するってのは……まるで「美●しんぼ」のダメな回を見ている様な気分にさせられた。 で、問題はもう一つ。ゲストキャラを中心とした話の組み立てに徹すればまだ「強引だけど読める作品」になったのかもしれないが、一葉に絡む二人の人物、元カリスマモデルのアリアと変人動物学者の椎堂、この二人のアクが強過ぎ。完全に各章のゲストキャラの存在感を食って「真昼の月」にしてしまっているのである。これなら短編連作形式なんて形にせず、一葉とアリア、椎堂の三人を明確な主役に据えた長編構成にした方が良かった様な気もするのだが。 いや、こう書くとアリアや椎堂が邪魔な存在の様に思われるかも知れないが若者のカリスマであったアリアが表舞台から姿を消してしまった経緯や、変人なのに妙にファッショナブルで容姿端麗な椎堂の過去みたいなのも膨らまそうと思えば幾らでも膨らませたと思うのだけど(それこそ作者の過去作「わたしたち、何者にもなれなかった」みたいに)そっちも終盤で一気に片付けてしまって膨らませ方が中途半端で終わった印象。 巻末を見る限りかなりの動物関連の書籍を読み込んでネタを仕入れた様子も伺えるのだが、そのネタを活かしたいという想いと人間ドラマを書きたい欲がこんがらかって取捨選択できないまま、動物蘊蓄も人間ドラマも中途半端なままガチャガチャに詰め込んでしまった作品になってしまった……こんな所では無いだろうか? 経験は豊富だし、下調べもサボらない尊敬すべき作家さんなのだが、今回は意欲が先走りし過ぎて小説を構築する上で避けて通れない「書くべき事の整理」が付かないまま見切り発車してしまった様な印象を受けてしまった一冊であった。 | ||||
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ファッション誌の編集になりたくて就職したのに女性向けカルチャー雑誌の編集部で働いている柴田一葉(いちは)が主人公。仕事には本気になれず、恋人にもふられて落ち込んでいるのに、10回連続の恋愛相談コラムの編集を任された一葉。しかしコラムを書くはずの元超人気モデル灰沢アリアは全部を一葉に投げるだけで何もしない。困った一葉が頼ったのは動物の求愛行動を研究している大学准教授・椎堂司。「私たちの恋に足りないものは、野生だ」のキャッチフレーズが導き出すものは・・・。 一葉は、読者の分身だろう。男女を問わず、十分に感情移入できるはず。 典型的な恋の悩みについて、動物の求愛行動をヒントに、人間の恋にまぶり付く不純な感情や覚悟の不足を指摘していくことになる一葉のコラムは、併せて一葉の仕事への取り組み方についても考え直させていくことになる。 さらにはアリアも司も自分を見つめ直さざるを得ない所に進んでいく後半で群と盛り上がる。登場人物たちの関係が次第に明らかになる中、アリアに迫る危機。クライマックスの緊張感と輝きはこれぞ頂点、これぞ小説!といった感じだ。 アリアのキャラが立っていて、読み終わってみれば、我儘女王様に見えたアリアが一葉や周りのキャラ、そして読者の背筋まで伸ばしてくれたように思える。 登場するのは真剣に悩んで努力する人ばかりで「新感覚ラブコメディー」と言うほどふざけてはいない。恋ももちろんだけど「私たちの生き方に足りないものは、野生の一途さだ」というのが核心かな。 恋愛成就の気配もしっかり語られているので、ラブ成分も十分に補給できる。さすがに瀬那さんである。 | ||||
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