シルクロードの鬼神
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文化大革命によって、北京からチベット奥地の収容所に送られていた単(シャン)元捜査官が主人公のシリーズ2作目の後編です。とある読書家に勧められて、第一作目の「The Skull Mantra」(邦題:頭蓋骨のマントラ)を昨年読みました。こんな作品があったなんて50年以上生きてきて、まったく知りませんでした。 少数民族に関心を持っているとはいえ、私にとっては難解な文章で、重苦しくもあり、途中で何度も中座し、別の書籍に手をだし、また戻って前のページから読み直し、上下を読み終わるのに数ヶ月かかっていました。しかし、その内容は強烈で、いかにチベット人などの少数民族が弾圧されてきたのか(今なお、その状態は続いているかとも思いますが)、その文化、寺院など物理的なものから心のなかの精神そのものまでが破壊されてきたのか、そのことを読み進んで知るにつけ、リアルな、匂うような肌身に感じさせる表現に触れ、自分の無知を愕然と考えさせられたものでした。そういう意味では文化大革命に翻弄された家族の物語「Wild Swans」(ユン・チアン著)を遙かに超える衝撃です。毎日を追われて生きている私の生活が空しくさえなりました。 それに比べて、2作目「Water Touching Stone」(邦題:シルクロードの鬼神)は、読みやすかったです。ひょっとして、まずこの2作目を先に読んだ方がとっつきよいのかもしれません。前編(上)では、さっぱり分からなかった一連の殺人事件の動機、意味も、後編(下)で、なるほどと腑に落ちる結末へ。さらに後編の後半に行くほどにスリリングで、一気に読み進むことができました。もちろん、この著者が多くの取材で得たのであろう、チベット人やウイグル人、カザフスタン人をはじめとする、中国「辺境」に生きる少数民族への視点は第1作と同様にしっかりとしており、その生活、考え方に触れることは、私たち日本で暮らしている者にとって、大きな衝撃であり、あえて言わせていただくなら、人生を考えさせられる作品であると考えています。 最近読んだ中では、神なるオオカミ・上神なるオオカミ・下(姜戎 著)に次いでの衝撃です。世の中には、すごい書籍がたくさんあるものです。作者は弁護士さんのようですが、1999年から数年に1作品ずつ、2009年の最新作までシリーズとして6作品出しています。次は邦訳されている3作目の「Bone Mountain」(邦題:霊峰の山)に進んでみようかと思います。チベットや少数民族に関心のある方、どうぞ、読んでみてください。私が年間100冊ぐらい読む本の中で、本当に心を打つ本にはそうそう出会えませんが、これは自信を持ってお勧めしたいと思います。 | ||||
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文化大革命によって、北京からチベット奥地の収容所に送られていた単(シャン)元捜査官が主人公のシリーズ2作目の後編です。とある読書家に勧められて、第一作目の「The Skull Mantra」(邦題:頭蓋骨のマントラ)を昨年読みました。こんな作品があったなんて50年以上生きてきて、まったく知りませんでした。 少数民族に関心を持っているとはいえ、私にとっては難解な文章で、重苦しくもあり、途中で何度も中座し、別の書籍に手をだし、また戻って前のページから読み直し、上下を読み終わるのに数ヶ月かかっていました。しかし、その内容は強烈で、いかにチベット人などの少数民族が弾圧されてきたのか(今なお、その状態は続いているかとも思いますが)、その文化、寺院など物理的なものから心のなかの精神そのものまでが破壊されてきたのか、そのことを読み進んで知るにつけ、リアルな、匂うような肌身に感じさせる表現に触れ、自分の無知を愕然と考えさせられたものでした。そういう意味では文化大革命に翻弄された家族の物語「Wild Swans」(ユン・チアン著)を遙かに超える衝撃です。毎日を追われて生きている私の生活が空しくさえなりました。 それに比べて、2作目「Water Touching Stone」(邦題:シルクロードの鬼神)は、読みやすかったです。ひょっとして、まずこの2作目を先に読んだ方がとっつきよいのかもしれません。前編(上)では、さっぱり分からなかった一連の殺人事件の動機、意味も、後編(下)で、なるほどと腑に落ちる結末へ。さらに後編の後半に行くほどにスリリングで、一気に読み進むことができました。もちろん、この著者が多くの取材で得たのであろう、チベット人やウイグル人、カザフスタン人をはじめとする、中国「辺境」に生きる少数民族への視点は第1作と同様にしっかりとしており、その生活、考え方に触れることは、私たち日本で暮らしている者にとって、大きな衝撃であり、あえて言わせていただくなら、人生を考えさせられる作品であると考えています。 最近読んだ中では、神なるオオカミ・上神なるオオカミ・下(姜戎 著)に次いでの衝撃です。世の中には、すごい書籍がたくさんあるものです。作者は弁護士さんのようですが、1999年から数年に1作品ずつ、2009年の最新作までシリーズとして6作品出しています。次は邦訳されている3作目の「Bone Mountain」(邦題:霊峰の山)に進んでみようかと思います。チベットや少数民族に関心のある方、どうぞ、読んでみてください。私が年間100冊ぐらい読む本の中で、本当に心を打つ本にはそうそう出会えませんが、これは自信を持ってお勧めしたいと思います。 | ||||
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静かに祈り耐え、信仰と文化を守る市井の人々のあまりにも報われない苦難の連続のなか、 わずかに一条の光が雲の間からもれ落ちるとき、全ての悲しみは一瞬ではあるが 歓びが訪れる。 七年前の作品であるが、中国におけるチベットの苦悩はいまも続いている。 | ||||
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ミステリー作品としても素晴らしい出来であると思うが、それ以外にもさまざまなものが見えてくる作品だった。強大な政治的意図により、翻弄され、虐げられている人々。そこで行なわれる暴行は肉体的なものばかりでなく、人々の心にも及び、ささやかな希望や思いをも踏みにじっている。単純に中国が悪いと言えたら、まだよいのかもしれない。しかし、虐げられ、踏みにじられている人間はチベットや西方少数民族の人々に限らず、主人公である単をはじめとする中国人、それも権力構造の中に組み込まれ、権力を行使する側にいる人の中にも見出せるのである。国というものは本来、そこに住む人々の幸福の為に存在するはずだ。それが一部の人間の欲望を充たすためのものになってしまっているとしたら、国が存在する意義はどこにあるのだろうか。しかし、現実の世界を見回せば、チベットの奥地や中国西域の国境地帯だけでなく、あちこちで起こっていることなのである。また、自身もまた暴行・拷問を受けながらも、そして、他人をかばうことでさらに自分に暴行が加えられることがわかっていながらも単をかばおうとした労働所の僧侶たち。彼らは与えられる暴行すらも自身に課せられた試練と考え、相手を憎むことなく、しかしただ受け入れるのではなく、自身の中の「美しいもの」を守るために無言の抵抗をしている。彼らのその姿を説明する言葉を私は持たない。「豊かな」などという言葉で説明するのは、あまりにも単純であろう。その彼らの信じる「美しいもの」や彼らの「強さ」を培ってきたものは、彼らの周りに広がるチベットそして中国西域の厳しくも美しい自然である。地球上から戦争や国、いや人間がすべて消え失せた後、最後に残るものはその雄大な自然だけではないのか。 | ||||
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日本語で読まれる方々へ。1作目『頭蓋骨のマントラ』、本作『シルクロードの鬼神』とタイトル、表紙図柄で引いてしまう読者が多いのではないか。特に二作目は、Water Touching Stone の訳としては、あまりにかけ離れている。せっかくの本をこのようなタイトルと表紙にしてしまった出版社にクレームをつけたい。しかし、内容自体は、他の評者も述べているように是非多くの方に読んでいただきたい。本書は色々な角度から読むことができるが、仮にミステリーとして読むとしても、非常に楽しめる本となっている。 多くの伏線をあらかじめ、あちらこちらに嵌め込んでおくのは多くの本ですでに繰り返し行われてきていることだが、本書が他書と違うところは、その糸を解きほぐしていく力として、主人公の心の声が大きな位置を占めていることがあげられる。しかし、決してはやりもののスピリチュアルものではない、なぜなら主人公が直面している世界には、政治と宗教と歴史が重く存在しているからである。重い現実に人の心がどう向き合っていけるのか、それを一つの冒険活劇風に、したがってとても読みやすい、本に仕上がっているところに本書のすばらしさを感じる。 | ||||
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