柚木春臣の推理 瞑る花嫁
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タイトルの森厳な意味がわかるのはほとんど終盤になってからですが、わかったときには大きな衝撃がありました。 物語は異様な音楽的才能にめぐまれた柚木春臣を探偵役に、二〇一五年、二〇〇三年、一九九八年、と時代をさかのぼり、また下りながら語られます。 ある旧家の先代の書斎である「驚異の部屋」が物語の中心となります。古楽器を中心に、ポイズンリング、アルチンボルドの絵、骨格標本の数々のコレクションなど、さながらバロック時代の魔術的思考のちりばめられたこの舞台に、先代の遺品である古楽器をひきとるという名目で楽器店から派遣された若者たちの中に、柚木もいます。 遺産をめぐってきなくさい空気がたちこめるなか、謎の人骨が発見されるとともに、当主が殺され、事件は迷宮に入ってゆきます。 きわめて日本的な風土と、先代のたちあげた「驚異の部屋」が不思議な味にブレンドされている背景がまず魅惑的。 そして傲慢なロマンティストであった先代と、幼い少年時代の柚木の、ゴールドベルク変奏曲をめぐる対決という、音楽の魔にかかわるエピソード。「驚異の部屋」の古楽器のかずかずも、仕掛けとして事件に大きくかかわってきます。音楽と死のほのぐらい関わり。 物語が進むとともに、この先代の積年の妄執がすべてのひきがねになっていたことがわかってゆくのですが、やがて、単に柚木の学生時代の名探偵ぶりを描いたエピソードと思われた軽めの第一話がこれにからんできて、豪奢な謎の網がいっきょに読者をからめとります。 あとは怒濤のごとくページを繰らされます。 使われている象徴や奇想はバロック時代のものですが、小説としてはゴシックロマンというべきか、『黒死館』を彷彿とさせます。 こうした時代背景や(作中にも出てくる)澁沢龍彦などに興味のあるむきにはこたえられない濃厚なミステリです。 悲鳴とからんできこえてくるチェンバロの音、人骨模型の花嫁の指にはめられた指輪、残酷なヨーロッパの王侯貴族を思わせながらたったひとつの純情を抱いた先代。それらに対峙する柚木も「同類」なのだ、と匂わせながら物語は終わります。 華麗な舞台設定がミステリのためのものに終わることなく、登場人物の業と宿命、そして柚木の運命そのものを象徴しえている点で、読後に深い残響を残す作品です。 | ||||
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『アバタールチューナー』全五冊(ハヤカワ文庫)で名を上げた天才肌の女流による書き下ろしミステリ長篇。 コンセプトは「おおまじめな館もの」! 舞台となるのは「驚異の部屋(ヴンダーカマー)」! これについては『愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎』(小宮正安/集英社新書)に詳しいが、ようするに貴族が道楽で集めた宝物を収める秘密の小部屋。こういう舞台で繰り広げられる密室殺人。胸が躍るでしょう? 主人公の名探偵・ユキこと柚木春臣が活躍する作品はすでにもう一作、どでかいやつが発表済みだが、いまだ単行本化に至っていない。刊行が待たれるところだ。 | ||||
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