信長殺すべし
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初版刊行(参考)
種別
長編
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あらすじ
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評判
信長殺すべしの評価:
7.00/10点 レビュー 1件。 C ランク
信長殺すべしの総合評価:
5.90/10点 レビュー 10件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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本書の構成は、簡単である。
1.明智光秀には共謀者がいる。(当然のように扱われ、ほとんど検証されてない。本書は、共犯者探しの本である。)
2.その共謀者は「本能寺の変」と同時に行動を起こしているはずだ。
様々な仮説を提示しながら”2."の原則に基づいて否定していき、最後に「本能寺の変」と同時に行動を起こしている”犯人”を見つけ出す。
本書には、歴史小説風の描写に逃避して検証を放棄している箇所が少なからず見られる。ミステリーとしてはルール違反であり、本書の持つ最大の欠陥だ。 もちろん、登場人物の一人の推理として提示され反論もきちんと提示されている場合もあるが、無責任に"事実"であるか如く描写し検証をスルーしているケースが多々ある。
信康のことで信長に詰問された酒井忠次が信康のために必死に弁明する光景を描いている箇所なんか最たる例だ。歴史作家見てきたような嘘を書く(笑)。「信康殺し信長の命令説」の典拠である『三河物語』にすらこんなことは書いてない。”酒井忠次は、すべて事実と認めた”と書かれている。
こういう露骨な”操作”から窺えるのは筆者が信長嫌いらしいことだ。
他のレビュアーの方も書かれているが、本書のファイナルアンサーには見事に説得力がない。貧弱な論理とごまかしに満ちた記述のためだ。
少し細かいが・・・
小説的描写に逃げ検証をスルーしている箇所は他にもある。
1.本書は、光秀が丹波、近江の領地を取り上げられたことを"事実"として描写している。本来、根拠となる『信孝文書』の真偽を検討する必要がある。『信孝文書』には偽書の疑いがあるからだ。
2.信康殺し信長命令説を当然の"事実"であるかのように描写している。信康殺し信長命令説は『三河物語』に基づく主張であり、『当代記』『安土日記』等の史料に基づく徳川家お家騒動説(現在では、こちらの方が通説である。)との比較考証が必要な”説”である。
3.光秀が母親を人質にして和睦に漕ぎつけたのに信長が波多野兄弟を磔刑にしたシーンを当然の事実のように描写している。この話は江戸時代に作られた疑いがある。同時代史料は、波多野兄弟は、信長が京を制圧した直後に臣従を申し入れながら、後に織田家を裏切ったことを示している。(磔刑は裏切り者に対する一般的な処刑である。)
4.「長篠の戦い」で徳川家ばかりが活躍しているシーンを事実のごとく描写している。しかも、それが徳川家の史料に基づく描写でしかないことを断ってない。徳川家の史料に徳川家の活躍だけが書かれているのは当たり前だ。
以下は蛇足です。
歴史ミステリーというのは推理の過程を楽しむもので結論を信じてはいけない。歴史ミステリーで主張している”結論”が本当の意味で証明できているのなら学術論文で画期的な新説として発表出来るはずだ。
まず歴史ミステリーは、奇説を主張しないと売れない。本能寺の変は、光秀の単独犯行で動機は不明、というような結論では、そもそもミステリーとして成り立たない。これは通常のミステリーで犯人の意外性が要求されるのと同じだ。
そして、通常のミステリーで、推理に説得力が無ければ失敗作とみなされるように、歴史ミステリーにおいても、最後まで読んだ読者に、「これはない」と思わせた作品は失敗作だ。(よく出来た歴史ミステリーを読んで、その結論を真に受けた読者を私は何人も知っている。)
歴史ミステリーでは、結論に合わせて史料が選択される。
1.都合の悪い史料は取り上げない。
2.都合の悪い学説、史料解釈は、簡単に論破出来る時を除き紹介しない。
3.逆に、都合のいい学説、解釈は、疑いようのない"事実"として紹介する。
こういうことが許されるのが”歴史”ミステリーだ。歴史ミステリーは作者によって与えられた史料(前提条件)のもとで推理を楽しむものだからだ。大事なのは推理の説得力だ。