つながれた山羊
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あらすじ
全身に煙草の火を押しつけられ、性器を切られた無惨な死体―警察はホモの猟奇殺人と考えていたが、死体の左手の小指が折れているのを見た私立探偵ジョン・カディは、戦友アルは拷問されて殺されたのだと確信した。ガディは友の仇を討つべく調査を始めた。アルの“敵”は何者なのか?彼がわざわざボストンまで来ていたのはなぜなのか?カディは手掛りを求め、アルの故郷ピッツバーグへ飛んだ。精力的に調査を続けるその行手にやがて差すベトナム戦争の影―カディは自らの過去をも振り返りながら、さらにペンタゴンまで探り始めた。だが、危険がすでに背後に忍び寄っていようとは、彼には知る由もなかった。やさしくもタフなボストンの探偵カディの、命をかけた復讐行を描く待望の第二弾。私立探偵小説大賞受賞。(「BOOK」データベースより)
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評判
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つながれた山羊の総合評価:
8.67/10点 レビュー 3件。
感想一覧
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主人公ジョン・カディは年齢設定からして著者ジェレマイア・ヒーリー(1948-2014)と同じく、1940年代後半に生まれたのではないかと推測するが、ベトナム戦争で「この世のほかの地獄」を体験し、そして1980年代後半では私立探偵として、惨殺された戦友の死に復讐を…という展開だが、彼の生きている世界はザラザラした手触りで、それでいて中年男性の女性との関わりと、人生のいくつも段階を越えてきた人間が、それと逃げることなく、ただし、社会の歯車としてのしんどさにまつわりつかれながらのいがらっぽさをかもし出していた。
日本なら私小説になるような中年男性の悲哀ではないかと思うが(もっともそれでは大した話にはなりそうもないけれども)、それを犯罪とベトナム戦争という歴史や社会性の中で展開していくのがアメリカ文化というものか。
ガツンと来る一節がある。
165頁「私が共感し、そのためなら死んでもいいと思った大統領が、われわれをある国の戦争に投げ込んだ。我々の一人として、共感もしていなければ、そんな所で死ぬべきではない国の戦争にだ」
日本で冷戦後期に生まれた筆者は、アメリカ人が自国の歴史の中の戦争にこのような感慨を持っていることを知らなかった。ベトナム戦争に対しての結論や要約、国家元首に対しての端的な論理的批判を表明していることは明快な気分にさせられる。
日本は爽快で無自覚にこうした異議申し立てが言える点検作業を、第二次世界大戦について、それが二世代を経過した後ですらきちんと出来ているとは言いがたい。
アメリカは戦争をし続けている国であるから、そうしなければアメリカは「次の戦争」に取り掛かる事も出来ないかもしれない。(そうでなければ、自国民を他国の戦場に送り出す大義名分が立たないので)
ベトナム戦争が影を落としているこの作品は、米軍内部で起きている腐敗や、ベトナム人の妻を持ったペンタゴン勤務の軍人など、多彩で多様な米国社会の複雑系を舞台に、かといって変に深刻に社会派を気取ることなく、女性を愛し、戦友の死に復讐し、過去の戦争の記憶と直面する、きわめてまっとうな(ただし一匹狼タイプの)アメリカン・ヒーローの物語だった。
彼は過去も現在も、全力で駆け抜けている。それは古今東西、人類なら誰でも共感する真摯さだと思う。
それが誰に喝采される訳でもない所が、さらにアメリカンであり、かつ、ハードボイルドでもあるのだろうけれども。
読んで酩酊するような重たい香気があった。
人生の重たさを知った後の方なら、けっこう共感できるのではないかと思う。
少年がこれを読んでも重苦しいばかりで不可解かもしれない(と筆者はかつての自分自身の感覚を思い出しつつ思うのだが)ハードボイルドは、中年の文学かも・・・という訳で、日本風に言えば厄年を越えたあたりの方々、どないだす。おすすめです。