冥王の花嫁(ハーデースの花嫁)



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初公開日(参考)1997年12月
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長編小説

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冥王(ハーデース)の花嫁 (講談社文庫)

2003年06月30日 冥王(ハーデース)の花嫁 (講談社文庫)

切断された首を腹部に埋め込まれた女性の全裸死体が発見された。ギリシア神話に登場する女面鳥体の怪物との関連性を、深町警部補から訊かれた舞台演出家・団精二は「ハーピイには姉妹がいる」と連続殺人を示唆。そして惨劇は予言通りに次々と発生した!想像を絶する動機を胸に秘めた猟奇殺人犯の正体は。 (「BOOK」データベースより)




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冥王の花嫁(ハーデースの花嫁)の総合評価:7.67/10点レビュー 3件。Bランク


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全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(7pt)

突き抜けずに終わった

今度の題材は劇場型猟奇的連続殺人事件。ギリシア神話に出てくる怪物をモチーフにした見立て殺人事件。
そして主人公の刑事深町のアドバイザー役として、かつてハリウッドで活躍した日本人怪優、団精二という人物を設定している。

団精二。この作品では日本人のイメージを覆す怪演でアメリカ映画界の人々に記憶を残し、俳優業に留まらず、前衛的な映画や演劇の創作を精力的に行うが、その内容のあまりの過激さに日本ではタブー視され、黙殺され続けた男、そして同性愛者でもある彼が、“恋人”の殺人事件の容疑者として逮捕されて以後、第一線から退いたと描かれている。この設定を見ると、すぐに思い浮かぶのがトマス・ハリスの『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター博士だろう。
ストーリーは深町の捜査線上に次々と現れる斬られた頭部を内臓をほじくり出された胴体に埋め込んだ死体が各所に現れる有様と、深町と団との間に繰り広げられる推理、そして茅野美智子が招待されたパーティ、つまり殺人事件場面の3つの場面が並行して語られる。特に物語を彩るのが団と深町との間で交わされる推理談義における、ギリシア神話の数々。そして章題もまたギリシア神話をモチーフにしている。

そして明かされる事件の真相はなかなかなもの。今までの彼の作品では一番の物ではないか。しかし明かされる真相全てではなく、やはりこの猟奇殺人の動機だろう。特に“なぜ犯人は死体の首を斬り、胴体に嵌めて処理したのか?”の真相について、思わず「おおっ」と声を挙げてしまった。
この動機についてはもしかしたら鋭い人は気付くかもしれない。しかし私はこの作者の読みにくい文章に目眩ましを食らい、もろに嵌ってしまった。
なかなか戦慄を覚えた。一番恐れていたこういう猟奇的犯行の動機、死体細工の動機がこのように驚きを持って明かされて、ほっとしたというのが正直な感想。

とはいえ、疑問が残ることも結構ある。
犯人は時間をかけて死体をばら撒いているが、これは本当に必要だったのか?
それから連想していくと、なぜ犯人は犯行現場から逃げ出さなかったのだろうかという疑問に行き当たる。
そんなことを考えたら、この物語は成り立たないよ、という人もいるかもしれないが、そこまで補完してこその本格ミステリだ。同じ劇場型猟奇的犯罪を扱った島田荘司氏の『占星術殺人事件』がその好例だ。

また前の作品の感想でも述べているが、この作者の云い回しは非常に理解がしにくく、突然の場面描写の変化に突っかかる事しきり。なぜこうも解りにくいのかと考えると、視点が急に変るからだ。例えば、相手と正面を向いて話している視点が、いきなり相手の背中から自分を見ている視点に変る、また主人公に起こった事をその主人公の主観に基づいて描くので、登場人物同様、読者にもいきなり何が起こったのかが解らなくなる。2番目については何がおかしいのか解らないと思うから例を挙げてみよう。
例えば、街をぶらついている男がいきなり開いたマンホールに落ちてしまうシーン。

タケシは少し時間があったので銀座をうろつくことにした。
特に目的はなく、ウィンドー・ショッピングで店を冷やかしていると、余所見をしていた彼は眼の前のマンホールの蓋が開いている事にも気づかず、そのまま落ちてしまった。

これをこの作者風に書くと、

タケシは少し時間があったので銀座をうろつくことにした。
特に目的はなく、ウィンドー・ショッピングで店を冷やかしていたが、次の刹那、気付いてみると、周囲は真っ暗だった。
周囲には饐えた臭いが立ち込み、臀部には鋭い痛みがあった。ふと顔を見上げるとそこには丸い形に空が刳り抜かれていた。
タケシは落ちたマンホールの底で恥ずかしげに周囲を見回した。誰もいるはずがないのに。

とこんな具合だ。これくらいだったらまだましだが、数行に渡って、いきなりの場面転換について叙述され、「な、何!?」と疑問符付で読み進むうち、ああ、こういうことだったのかとようやく解るのだ。別段、他の作家も使うのだろうが、普通ならそれはアクセントとして、読者の興味を一層惹きつけたい場面でのこと。この作者の場合は普通に読むべきところで方々あるのだから、突っかかって仕方がなかった。

そして最後の結末の呆気なさ。しかしなんとも読み甲斐のない結末だ。
これで奥田作品は最後。やはり消えゆく作家はそういう運命にあったのだと知らされた。“化ける”作家とそうでない作家の違いはほんの紙一重なんだろうけど、この作品で化けきれなかった奥田氏の浅さを見てしまった。


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Tetchy
WHOKS60S
No.1:4人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

私が推理小説を買う時の基準の一つに

いかに被害者が猟奇的に殺されるか、というのがあります。この小説は裏表紙に書かれているあらすじを二行読んで購入を即決いたしました。残念ながらここにそのあらすじが書かれていないのでそのまま引用させて貰おうと思います。
『切断された首を腹部に埋め込まれた女性の全裸死体が発見された。 以下略』
どうでしょう?簡潔ですがなかなかグッとくる一文だと思うのですが。
もちろん死体はこれ一つではなく二つ三つと続きます。そのどれもなかなか素晴らしい装飾が施されていて読み進めていくうちにゾクゾクした感覚が味わえます。
そして私が小説を買う時に基準の一つに入っている表紙絵。これも申し分ありません。本の内容、題名に相応しいおどろおどろしい絵柄が綺麗です。
この二つだけでも私は躊躇なく本を手にレジに向かいました。

さてこの小説の登場人物は警察側の人間として深町警部補、探偵役として団精二(だんせいじ、と読みます。個人的にこのようなしょうもない名前付けのセンスは大好きです。)がこの二人が主に出てきます。
深町警部補はとても良識的というか、庶民的というかちょっと中年の悲哀を抱えているところというかとても好感、親近感が持てます。監察医との会話はテンポが良く読んでて楽しいです。
問題は探偵役の団精二です。彼がこの小説内では一番の強烈な個性を放っています。どのくらい個性的かというと彼は以前アメリカで恋人を殺した容疑で警察に捕まっているのですが、警察が殺害現場に踏み込んだ時彼は恋人の死体の身だしなみを整えている最中でした。これだけを読むと恋人がたとえ死後とはいえども他者に恥ずかしい格好(全裸で殺されていたので)を晒されるのは忍びない、と考えた結果かな、とも読み取れるのですがその手に握られているのは彼が恋人に贈った『どぎついデザインの下着』と言うのでは一気に台無しになるのはお分かりかと思います。

主人公二人の性格はしっかりと特徴付けられているのですがこの作者さんの文章はとても淡々としています。なのでどんなに猟奇的な死体でも、団のあまり品性よろしくない行動や言葉もあまり嫌悪感なく読めるのでおすすめです。


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伊木都木
Y72I2FH9
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No.1:
(3pt)

猟奇殺人

首を切断して、それを腹部に押し込むという殺人方法は猟奇的だが、実際の解体などの描写はないので、それほどグロいとは感じない。主人公の深町刑事と検視官との会話や、事件を解き明かす切れ者だが変人の舞台演出家の団精二との会話は皮肉やユーモアにあふれていてなかなかいい。殺人動機が、だからどうしたという感じではあるが、読ませる文章なので、よしというところかな。
冥王(ハーデース)の花嫁 (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:冥王(ハーデース)の花嫁 (講談社ノベルス)より
4061819992



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