【中井英夫】
幻視: 中井英夫作品集2
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昭和29年の洞爺丸沈没事故で両親を失った蒼司・紅司兄弟、従弟の藍司らのいる氷沼家に、さらなる不幸が襲う。
日常的な人間世界を超え、あるいは離脱して、幻視者たちが存在する。彼らが視るものは反地上的な夢、濃密な幻想である。
一九七八年、『月蝕領宣言』を果たした中井英夫。しかし自らの分身とまで呼んだBの発病がAを襲う。
ここに扱われている薔薇は、おおむね狂気と死との彩りであって、その香りは苦く、色彩はむしろ幻覚に近い。
葛原妙子、塚本邦雄、中城ふみ子、寺山修司、春日井建、浜田到…戦後短歌のきらめく星座は『眠るひとへの哀歌』の詩人・中井英夫によって不滅の輝きを放つことになった。
この世ならぬ美への憧れ、だがこの地上にその希いを適える術はあらかじめ失われているのだ…。
昨年末、「虚無への供物」の物語が始まる12月10日に急逝した中井英夫の未刊行作品集成。
影だけが妖しく壁を伝い、眠りだけがすべてを宰領する月蝕領映画館。
LeRomand’unTricheur. ――その邦題「とらんぷ譚」に魅せられたことばの錬金術師中井英夫が、十年を費やした連作「幻想博物館」「悪夢の骨牌」(泉鏡花賞受賞)「人外境通信」「真珠母の匣」を一冊に集成した。
薔薇、香水、宝石、シャンソン、百科事典、コンピューター…ハネギウス一世の偏愛する美の世界に、1983年、田中貞夫と寺山修司、かけがえのない二人の死がもたらされた…。
鏤骨の文体、トリッキイな構成、縦横の想像力によって奏でられてきた中井ワールドは、作家の実人生と引き換えに豊饒な収穫の時期を迎えることになる。
ゴシック風の豪奢な洋館のサロンで開かれる賀宴の出席者は、10人の客とサロンの女主人、そして令嬢柚香。
日本陸軍参謀本部で孤独に綴られていた稀有の戦中日記『彼方より』と、待望していた敗戦の日に立ち会うことなくいきなり戦後に放りだされ、小説とひとの愛をひたすらに求め続けた苦い彷徨の記録『黒鳥館戦後日記』『続・黒鳥館戦後日記』、全三冊を収録。
“人間ならぬ何か奇妙に悲しい生物”三島由紀夫への痛恨の鎮魂曲、江戸川乱歩ら異端と幻想の作家への限りないオマージュ、『黒鳥の旅もしくは幻想庭園』『ケンタウロスの嘆き』『地下を旅して』三冊のエッセイ集を初の文庫化。
遠い十二月の夜、失われた金貨は一羽の黒鳥によって鮮かに呑みこまれた…。
1974年にヨーロッパへ取材した薔薇と香りの虚用書『薔薇幻視』『香りへの旅』を一巻に収録。