クラーク・アンド・ディヴィジョン
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CA在住、日系3世作家ナオミヒラハラ氏の日系ミステリー新シリーズ第1弾。2世庭師マスアライシリーズ(『ヒロシマ・ボーイ』)等、これまでの作品は現在の物語であり、過去を振り返るシーンで戦時中日系人の身に起こった事柄が散りばめられていた。今作は正に戦時中に焦点が当てられ、アメリカにいた日系ファミリー目線で、当時の状況や人々の暮らしが入念なリサーチのもとに描かれている。 日本生まれの親を持つ2世が、戦時体験を描いた自伝や小説は数あるが、当時の貴重な実体験を窺い知る事はできても、やや表現の古さや感情のバリアを感じ、まるで模範的作文を読んでいる心地になったりする。その点、ヒラハラ氏のような今の作家が手がけると、新鮮な空気と共に情景や人々の息遣いが蘇り、現在への繋がりを感じられる。戦後40年経ちレーガン大統領が日系人に謝罪し補償金が支払われたとか、日系政治家やアスリートが活躍するとか、その後を知っているのもあるだろうし、911後のムスリム系アメリカ人に対するヘイト、コロナ禍のアジアンヘイトへの、日系アジア系コミュニティーのリアクションも決して無関係とは思えなくなる。 シカゴの「クラーク・アンド・ディヴィジョン」駅近くで、悲しみを抱えながら新生活を始めたイトウファミリー。アキは姉が自ら命を絶ったとは信じられず、元ルームメイトや職場を訪ね歩き、警察に乗り込みもして独自に調査を開始する。同時に図書館での職を得、ポーランド系やアフリカ系の友人もでき、ストロベリーアイスを楽しみ、ダンスパーティーに繰り出したりして青春を謳歌する。とはいえ時はまだ戦時下、2世男子が米軍兵としてヨーロッパへ出征してゆく様も描かれる。 原書発売から3年、前作『ヒロシマ・ボーイ』も担当された芹澤恵氏による邦訳本が発売された。芹澤氏のテンポのよい飄々とした文体は人物に息を吹き込み、まるで自分もシカゴの街にいるような臨場感に溢れており、姉の陰に隠れていた日系の女の子がひとりの個を持つ女性へと成長する物語としても充分に楽しめる。続編Evergreenの邦訳本も、引き続き手がけて頂けると嬉しい。 | ||||
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読むのに少し時間を要しました。 1940年代の米国。カリフォルニア、トロピコで暮らす日系二世のアキ・イトウが主人公。1941年。真珠湾攻撃。日米開戦。1942年3月、カリフォルニア州に暮らす日本人は米国籍があるなしに関わらず収容所に送られます。イトウ家が送られた場所は、マンザナー強制収容所。そして、米国に対して忠誠心を持つと認められた収容者は収容所を出ることを許されます。イトウ一家は戦時転住局(WRA)によってシカゴへと転住させられます。先にシカゴへ向かったアキの姉、ローズとの出会いを楽しみにしてシカゴに到着した一家を待っていたのは、ローズがシカゴの地下鉄の事故で亡くなったという知らせでした。ローズの死が自殺と処理されたことに違和感を覚えたアキがど素人ながらその死の真相を調べ始めます。果たして、ローズに何が起こったのか?アキはまるで「米国私立探偵小説」を知る非力な女神のように真相に向かって一歩、一歩近づいていきます。 私は一人のスリラーの読み手ですので、中盤まではその物語の進捗の遅さに少し辟易としました。そのミステリ的興趣についても特に感心できることはありませんでした。 しかしながら、最後まで読み通すことができた理由は、一人の「ニセイ」の女性の生活感溢れる日常が生き生きと描写されていたことに他なりません。 「わたしたち日系人もほとんどがアメリカで生まれたアメリカ人だということだ。」(451p.)という静かな主張に裏付けられたアキ・イトウのアドレッセンスの物語は、その頃のクラーク・アンド・ディヴィジョン駅界隈のストリートが一人の女性の"アイデンティティ"の確立を見届けることで終わりを迎えます。 とてもいい小説でした。 ◻︎「クラーク・アンド・ディヴィジョン "Clark And Division"」(平原直美 小学館文庫) 2024/7/13。 | ||||
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第二次大戦中のアメリカで日系人の受けた様々な差別を背景に、駅で「事故死」した姉の死の真相を日系二世の女性が探る物語です。「背景に」とは書いたものの、私の心を揺さぶったのは、むしろ日系人たちの苦労話の数々。姉の死を巡る謎を探っていくと、さらなるアメリカ社会の権力の腐敗と人種差別・女性蔑視が明らかになっていく、という深みのある社会派ミステリーでした。結局、物語から80年後の今の日本も、アメリカにいいように使われているだけなんでしょうね。この本を読んで、改めてそう思いました。 | ||||
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