【千野隆司】
恵方の風: 駆け出し同心・鈴原淳之助
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北町奉行所の与力と同心、八重樫力弥と鈴原左門は、門弟数千人を擁す鏡新明智流士学館桃井道場の『竜虎』と並び称される剣客だった。
商家の若旦那の刺殺、そして、闇討ちにされた身元不明の浪人。
静まりかえった深夜の小名木川に艪音だけが聞こえる。闇米を運ぶ平田船だ。
材木問屋の奉公人が刺殺され、凶器の脇差が腹に刺さったまま残されていた。
本所来栖道場の師範代・豊之助は懸命にオンボロ道場の立て直しをはかるが、弟子は遅々として集まらない。
神田上水の堀が決壊した。その甚大な被害が明らかになるにつれ、普請奉行の責任を問う声が日ましに大きくなっていった。
北町奉行・永田備前守正直の三男である豊之助は婿入りの話を断わり、剣客として生きる決心をした。
奉行から別御用を仰せつかった同心・楓山主税助。その御用とは、大身旗本の姫を知行地・下仁田まで護衛するというものだった。
仇討ちの父子を道場に居候させた豊之助だったが、どうやらその仇とは、江戸を騒がす火付け盗賊団の頭らしい。
春嵐の夜に神田で起こった火事は多数の死傷者を出したが二年後に町は復興した。
幾人もの侍に追われていたところを豊之助が救った常太郎と名のる若侍は、いかにもいわくありげな様子。
江戸深川、永代寺門前の花柳街を仕切る、女郎屋女主人のおらん。町で逆らえる者はいなかったが、敵対する新興勢力が現れた。
五十両の借用証文を残して、仏具商川角屋の主人が失踪した。
辻斬りの現場を目撃してしまった、冬次の女房おまち。唯一の目撃者であるおまちが命を狙われた。
将軍御目見の旗本・香坂家へ婿入りし、新御番衆として、江戸城へ出仕する身分となった藤吉。
七百石取り旗本の次男、大曽根三樹之助は、大身旗本小笠原監物の嫡男、正親の横暴で許婚を亡くし、剣の修業に励む日々を送っていた。