書楼弔堂 霜夜
発行日:2024年11月26日
出版社:集英社
ページ数:520P
あらすじ
花も盛りの明治40年――高遠彬の紹介で、ひとりの男が書舗「弔堂」を訪れていた。甲野昇。この名前に憶えがあるものはあるまい。故郷で居場所をなくし、なくしたまま逃げるように東京に出て、印刷造本改良会という会社で漫然と字を書いている。そんな青年である。出版をめぐる事情は、この数十年で劇的に変わった。鉄道の発展により車内で読書が可能になり、黙読の習慣が生まれた。黙読の定着は読書の愉悦を深くし、読書人口を増やすことに貢献することとなる。本は商材となり、さらに読みやすくどんな文章にもなれる文字を必要とした。どのようにも活きられる文字――活字の誕生である。そんな活字の種字を作らんと生きる、取り立てて個性もない名もなき男の物語。